「学生で唯一、今すぐにスーパーラグビーに行っても使える選手。走力があって体が大きく、タックルが強いのに器用。攻撃のイマジネーションもある」

 その才能は大学王者という高レベルな環境で磨かれた。高校日本代表の候補にも入らない無名選手だったのに、大学では1年からレギュラーに抜擢された。1年生でスタンドオフ(SO)、2年でウイング(WTB)、3年でセンター(CTB)、4年でFBと、スクラムハーフ(SH)以外のバックスポジションをすべて経験。昨季はトップリーグ(TL)のNECを下す原動力になった。日本ラグビー協会コーチングディレクターでU20日本代表ヘッドコーチの中竹竜二さん(42)は、こう期待を寄せる。

「次のW杯は必ずどこかのポジションに絡んでくるはず」

 早生まれのせいか、3人兄弟の末っ子だからか、「普段の動きとか何でも人より遅い」性分。「4年生までに試合に出られたらいいなぁ」と思っていたのに、入学直後からレギュラーに。

 当時は182センチ、78キロとスレンダーで端正な小顔。ラグビー界屈指と言われる帝京大のフィジカル強化スタッフに「モデルかよ」といじられた。栄養士には「何を食べてとか選んでいるレベルじゃない。量が足りなすぎる」とまで言われる始末。他の小食組と毎晩食堂に居残りして食べていたある日、上級生が夜食の鍋を作り始めて、度肝を抜かれたという。

 そんな環境で少しずつ自信をつけた。身長は2センチ伸び、体重も14キロ増えて92キロに。これは代表入り当時の五郎丸と同じ体重。エディ・ジョーンズ前ヘッドコーチに「外国人に当たり負けしないよう100キロにしろ」と言われ、それを達成した五郎丸の後を追うつもりだ。

「19年はもちろん、その先も。海外で経験を積みたい」(森谷)

AERA  2015年12月28日―2016年1月4日合併号より抜粋