11月2日、カヌーを降り、海面に浮かんでいた女性(42)は突然、海上保安官に両肩をつかまれ、水中に3回沈められた。身に着けた小型ビデオカメラは、伸びてくる海上保安官の手を写し、その後、水没する。「やめて! 助けて!」。女性の叫び声に、海上保安官が耳を貸す様子はない。


 
 11月18日には、海上保安官4人がかりで押さえ込まれた船長の男性(62)が一時、意識不明になった。男性は「殺されるかと思った」と振り返った。

 記者に聞こえないところでは、暴言を吐く警官や海上保安官もいるという。

「お前は犯罪者だ」「それでも日本人か」

 拘束され、「ブタ1名確保」と言われたとの訴えさえあった。

 県警や海保は一貫して否定するが、言動はエスカレート傾向にある。「このままでは死者が出る」という市民側の懸念は、決して大げさではない。

 沖縄は考えられる全ての民主的な手続きを使って、普天間飛行場返還と引き換えの新基地を拒否してきた。古くは1997年、名護市民投票で。最近は昨年の知事選で、公約に反して新基地建設を認めた仲井真弘多(ひろかず)氏に代わり、反対を掲げる翁長雄志(おながたけし)氏を選び直した。

 翁長氏は、仲井真氏が国に与えた埋め立て承認を取り消した。安倍政権の答えは、取り消しの撤回を求めて県を訴えることだった。裁判が始まった12月2日、被告席から証言台に立った翁長氏は「日本には、本当に地方自治や民主主義は存在するのでしょうか」と訴えた。

AERA 2015年12月14日号より抜粋