上京しては、徳島大ならではの学部としてアピールしたが、

「最初は、中身が甘いとたくさんの指摘を受けました」(同)

 道のりは険しかったが、14年10月、中村氏がノーベル物理学賞を受賞。盛り上がる学内の雰囲気にも後押しされて、無事に学部設置に必要な補助金を得ることができたという。

 新学部のテーマは「6次産業化」だ。生産、加工、流通、販売までの全てを網羅し、新しい産業を提案することを目指すという。四国4県と兵庫、岡山、広島の高校生約1800人を対象に意識調査をした結果、定員の100人を上回る501人が第1志望と回答するなど、前評判は良好だ。

「もともとあった構想と、文科省の唱える改革がうまく合致した結果。常に少し先んじて準備ができたので、改革がうまくいったのでしょう」(同)

 とはいえ、地方の国立大学の多くは、ロクテンハチ通知への対応に苦慮する。教育社会学者の竹内洋・京大名誉教授(現関西大学東京センター長)は、「文科省は科学技術の分野に予算を充てたいのだろうが、人文社会科学系の歴史や文化の知識は、すべての研究の土台となる重要な教養です。文系を問題視するのであれば、私立大学も含めた国内の大学全体の役割分担を検討すべきであり、非常に臆面のない大学改革です」と文科省を批判したうえで、こう続ける。

「けれど、私は言われるがままでいる大学側も情けないと思いますよ。予算を握る文科省に、大学なんてどうにでもできると思われてしまっています」

AERA 2015年11月23日号より抜粋