文科省の調査でも、現場の教師が最も負担を感じている業務は「国や教育委員会からの調査やアンケートへの対応」だった(撮影/今村拓馬)
文科省の調査でも、現場の教師が最も負担を感じている業務は「国や教育委員会からの調査やアンケートへの対応」だった(撮影/今村拓馬)

 世界的に見ても労働時間が長いとされる日本の教師。その労働に正当な対価は支払われていないうえ、なかには「意味があるのか?」と思ってしまうような仕事を課せられることも。日本の教師を取り巻く現実とは。

 経済協力開発機構(OECD)が2014年に公表した「国際教員指導環境調査」によれば、調査に参加した34カ国・地域の教師の1週間あたりの勤務時間は平均38.3時間なのに対し、日本は53.9時間。この日本の数字は中学200校(公立9:私立1)の校長と教師へのアンケートによるものだが、全日本教職員組合が行った「勤務実態調査」(12年、回答者数6879、うち教員5880)でも、国が過労死ラインと定める「月80時間以上の残業」をする教師が35.8%と3人に1人。月100時間以上の残業をする人も5人に1人(21.3%)に上ったという。

 さらに問題なのは、この長時間労働に対する対価が正当に支払われていないことだ。

 戦後の公務員給与改革の際、教師の給与は、「勤務時間が単純には計れない」ことを踏まえて一般公務員より1割程度高く設定され、時間外勤務手当は支給しないこととされた。支給を求める訴訟が多数提起されたことを受け、国は1966年度に実態を調査。原則として時間外勤務は命じないこと、命じる場合は(1)生徒の実習(2)学校行事(3)教職員会議の三つに関する業務と(4)非常災害などのやむをえない場合の4項目に限ること、時間外勤務手当はやはり支給しないが、代わりに月額給与の4%分に相当する「教職調整額」を支給することを決めた。

 この状態がいまも続く。「4%」という基準が算出された当時の教師の1カ月の平均残業時間は約8時間だ。現在の長時間労働にはとても見合わない。

 残業理由に納得がいけばまだいい。しかし、「この仕事に意味があるのか?」と思う場面も少なくない。

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