紙の同人誌は、インターネットの普及にも負けない文化だ(※イメージ)
紙の同人誌は、インターネットの普及にも負けない文化だ(※イメージ)

 オタク市場1兆円、市場規模は10年間で4倍。なかでも紙の同人誌は、インターネットの普及にも負けない文化だ。TPP後の著作権のありようも議論されるなか、今後同人誌はどうなっていくのか。

 東京・秋葉原を中心に店舗を構える同人誌販売の「とらのあな」には、年間3万前後ものサークルの作品が持ち込まれる。執行役員・鮎澤慎二郎さんはこう話す。

「当社に委託されるサークルさま全体で、年700万~800万円程度の売り上げのあるところは、1割以下の1500から2千組程度。当社のみの販売ではなくイベント販売や他店さまの販売を含めての想定です」

 ただし、3万サークルは、全体の2割が常に入れ替わっている状態。続けられずに辞めていく人もいるからだ。

 同人誌の世界も甘くはないが、作家は独りでもない。鮎澤さんは、こうも言った。

「ファンが同人誌を買う。それは単なる消費活動と割り切って見えないんですよ」

 あえて言うなら「投資」に近い。一冊1千円に満たない投資で、無数のファンが作家を支える構図は、ファンド(基金)型のビジネスとも呼べる。その網は無数に広がっていて、巨木の根のように強い。

 彼らの熱意を媒介するものが、「紙の本」。手ざわりのあるワン&オンリーなモノを欲しがっているから、無限に複製可能なネットに主導権が渡らない。

 だが、そんな同人文化で、ひとつの懸念がある。この10月に交渉合意に至ったTPPである。知財分野もその対象で、著作権保護の観点から「二次創作は大丈夫か」という声があがっている。なかでも、「著作権侵害の非親告罪化」は問題視されてきた。

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