安倍晋三首相と面会後、取材に応じる自民党の宮沢洋一税制調査会長。軽減税率制度の具体策を指示されたと述べた (c)朝日新聞社 @@写禁
安倍晋三首相と面会後、取材に応じる自民党の宮沢洋一税制調査会長。軽減税率制度の具体策を指示されたと述べた (c)朝日新聞社 @@写禁

 消費再増税と同時に欧州型の軽減税率を導入する――。参院選を控えた首相は「理念なきバラマキ」を決断した。

 急転直下の決着だった。安倍晋三首相は10月14日、新たに自民党税制調査会長に任命した宮沢洋一・前経済産業相を官邸に呼び、欧州各国で採用されている軽減税率制度の導入に向けた具体策を、公明党との間で話し合うよう指示。制度導入に慎重な姿勢を取り続けた自民党税調と財務省が、首相の裁定で屈服させられた瞬間だった。

 年末に決める与党税制改正大綱に具体策を盛り込むことを目指し、両党間で議論が進む見通しだ。

 2017年4月に消費税率が10%に引き上げられると、消費者の負担はさらに増す。それを少しでも軽減させるため、公明党は、食品をはじめとする生活必需品の税率を低く抑える軽減税率の導入を主張。一方、自民党や財務省は「どんなやり方をしたって必ずだめになる」(財務省幹部)と消極的な立場を崩さず、2年半余りを経ても手詰まり状態が続いていた。

 そんな中、「酒を除く飲食料品にかかる消費税の2%分を、マイナンバーの個人番号カードを活用して後日払い戻す」という財務省の「還付方式」が9月初めに急浮上。一時は、この案をベースにして協議がまとまるようにも見えた。

 実は、財務省案の作成には自民党税調幹部に加え、北側一雄副代表ら公明党幹部も関わり、官邸への根回しも済んでいた。

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