韓国の感染爆発も、発端は中東から帰国した人だった。隔離までに受診した医療機関、特に2番目の聖母病院で、医療スタッフや同じ病室に入院していた人、見舞いに来た家族らに感染が広がった。

 感染力などは、よく分かっていない。人から人へうつるが、院内感染や家族間などに限られている。多くの専門家は「韓国の観光地を歩くだけで感染するような強い感染力はないと考えられる」と見ており、感染力を推計した仏パスツール研究所は「SARSより感染力は低く、現段階では世界的流行は起こしにくい」と結論づけている。

 とはいっても、韓国は一番近い外国だ。定期便が行き来する地方の空港や海港も多い。厚生労働省は今月4日、全検疫所に韓国からの帰国者に関する注意喚起の通知を出した。

 岡部信彦・川崎市健康安全研究所長は「MERSが侵入したらエボラ出血熱より対策は厄介だ」と懸念する。せきや熱から、その後、肺炎になるという病気は他にも多いからだ。

 帰国時に症状があったら、隠さず検疫で申告する。帰国後、せきや熱が出て病院に行く場合は必ず渡航歴を告げる。「患者さんの協力が最大の防御力。家族や友人たちを守ることにつながります」と岡部さんは言う。

AERA 2015年6月22日号より抜粋