具体的な志望企業を絞り込む段階で母がしたアドバイスは、

「会社説明会では『男女平等に出世できます』なんていう表向きの話しか聞けないんじゃない?本当に長く働ける環境かどうかちゃんと知るためにも、たくさん社員に会ってみたら?」

 娘は20人ほどのOB・OGを訪問し、面接に臨んだ。母によれば、就活期間中の夕食は、娘の「マシンガントーク」の時間。

「OG訪問してみて、この会社は受けてみたいと思ったよ」「今日の面接で嫌なことを言われたんだけど、ひどくない?」

 それはね、と言いたいこともあったけれど、母は聞き役に徹した。娘は言う。

「聞いてもらって気持ちが楽になったし、言葉にするだけで当日の振り返りの場になった。考えがまとまるんです」

 母は、自分の会社での面接官の経験を生かして、エントリーシートを添削したり、面接の練習相手を務めたりもした。

「それぞれの志望企業のことはわからなくても、娘の話が初めて聞いた人に伝わるかどうかはわかる。最初は暗記した自己PRを読み上げていたので、もっと熱意が伝わるように話したら、とアドバイスしました」

 娘は、こう受け止めた。

「何度も練習するうちに、面接本番も楽しめるようになりました。ちょっと大げさなくらいでも感情を込めて、面接官と会話を楽しめばいいんだって」

 最終的に、銀行2社と大手消費財メーカーに内定。メーカーへの就職を決めた。

AERA 2015年5月18日号より抜粋