「10日とか2週間だといつもの休みが長くなった程度ですけど、1カ月の休みってなかなか取れない。長い日数を休むことで罪悪感も感じてみたかったのかもしれません」

「人は知らず知らずのうちに最良の人生を選び取っている」を人生のモットーとする小山さんが決めた休みのテーマは、「残りの人生を豊かにする」。後半の人生をさらに楽しく、ということだろう。

 まずは「親孝行」を果たそうと、中国語を勉強している父を中国旅行に誘い断られるという想定外から、休みはスタートした。美食家の小山さんらしく、後半の人生もおいしく食べられるように「歯の集中メンテナンス」をすると、以前から行ってみたいと思っていたヨーロッパの都市へ。いま、こう振り返る。

「50歳という年齢で1カ月という期間、休むことに意味があると思うんですよね。30~40代で1カ月も休んでチャンスを逃すのはもったいない。60歳を定年とすると、50歳までずっと階段を上り続けてきたのに、ここにきて、部下からプレッシャーを受けたり、社内で優遇されなくなったりしている人もいるでしょう」

 実際、50歳は今まで一生懸命駆け上がってきたのに急にペースが落ちてきて、それでも上らなくてはならないという時期だと言っていいだろう。

「そんな時、1カ月の休みは、残り10年分の階段をどう上るかを考えるきっかけになるんじゃないでしょうか。休むことでリセットされれば、いっそ駆け上がってやるかと思い直すかもしれない」

AERA 2015年5月4-11日合併号より抜粋