データの取捨選択や図のデジタル処理がどこまで許されるのかといった決まりを知らない「無知」のため、結果的に研究不正をしてしまう例もあるという。研究者としての倫理教育が重要だという認識が広がるなか、文部科学省は日本学術会議に対策の審議を依頼。同会議は、研究倫理教育の徹底など、対策をまとめた。原則として、実験ノートや画像などを論文発表後10年間は保存し、試料なども5年間保存することを決めた。

 科学研究費などの配分機関である日本学術振興会は、日本学術会議と協力して、『科学の健全な発展のために』という教材を出版した。研究不正だけでなく、利益相反、個人情報の保護、著作権、研究費の使い方など、研究者に理解していてもらいたい内容を幅広く取り扱っている。日本学術振興会の浅島誠理事は、教材の狙いをこう話す。

「研究者がルールを知っておくことは大切。英語版やeラーニング版も作っています。萎縮しないで落ち着いて研究をしてほしいというメッセージも伝わればと思います」

AERA  2015年4月20日号より抜粋