年商10兆円超の一大流通サービスグループ、セブン&アイ・ホールディングスが発足して今年で10年。強い組織づくりで大切なのは「世の中の変化に対応する」ことだと、鈴木敏文会長は話す。成長し続ける組織を率いるリーダーの心得とは?

――組織がベクトルを合わせることは容易ではありません。

鈴木会長:口幅ったいですが、やはりリーダーシップが大事なんですよ。過去に銀行をつくったときも、グループ共通のプライベートブランド「セブンプレミアム」を開発したときも…新しいことを始めるときは、だいたいみんな、反対しました。

 しかし、「今のままでいい」はありっこないわけですから、最後は「やれ」と命じました。失敗だったら私が責任を取る。そう言い切って、挑戦させたのです。すると結果が出たわけですから、もう誰も何も言わなくなりました(笑)。こうして時に命令してでも、方針を示すのがトップの役目です。

──会長のその「思い」をどう社員に伝えておられるのですか。

鈴木会長:セブン―イレブンの場合、創業以来、店舗の経営相談に乗る本部の営業部員・OFC(オペレーション・フィールド・カウンセラー)に、ダイレクトに私の考えを話してきました。2500人規模の大会議になっている今も、隔週で全員の顔を見て、30分~1時間、話しかけています。「直接対話」こそが、組織で思いを共有する最善の手段だと考えているからです。

 難しいことは言いません。「お客様の立場に立って考えよ」「新商品をつくり出せ」「品切れを起こすな」といった基本的なことばかり。こうして私の信念が「ブレない」という点も、社員に伝わる理由かもしれません。

AERA 2015年2月9日号より抜粋