今年83歳を迎えるとは思えない若々しい発想で、時代の変化をキャッチする鈴木敏文会長。コツを尋ねると「勘ですよ」とほほ笑んだ(撮影/今村拓馬)
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今年83歳を迎えるとは思えない若々しい発想で、時代の変化をキャッチする鈴木敏文会長。コツを尋ねると「勘ですよ」とほほ笑んだ(撮影/今村拓馬)

 今年で発足10年を迎えるセブン&アイ・ホールディングス。会長の鈴木敏文氏は、強い組織に必要なことは「世の中の変化に対応する」ことだと言う。そうした組織をつくるには、どんなことを心構えが必要なのだろうか。鈴木会長に話を聞いた。

──何事も「変わる」ことは難しいものです。どんな心構えが大切なのでしょうか。

鈴木会長:過去にとらわれないことです。経験を積むほど過去にとらわれ、新たなチャレンジに二の足を踏んでしまう。これが企業を衰退へと導く要因。現に業績が伸びない企業の共通点は「成功体験に引きずられている」でしょう。

 高齢化は拍車がかかり、単身世帯が増えている…社会は変化し続けているのに、作る商品が同じでは売れるわけがありません。お客様の消費心理の変化を読み取り、臨機応変に手を打っていかなくては、時代に置いていかれるのは当然です。

──やり方次第でヒットを出せると? 

鈴木会長:そのとおりです。私が業績を上げる原則として口酸っぱく社員に言うのはふたつ。「新商品を出し続ける」と「(消費者にとって欲しいモノが店にない)機会損失を起こさない」です。

 前者については、よくネクタイを例に出して説明します。

 ビジネスマンならネクタイを何本も持っているものでしょう。それでも買うのは流行に合わせたい、個性を出したいという心理の表れ。「新しい物が欲しい」という消費者ニーズは、“無限にある”ということなのです。

 後者は小売業特有の視点ですが、消費者の「欲しい」というタイミングを逃してはいけない、ということ。私たちがリアルとネットを融合させ「いつでもどこでも、欲しいものが手に入る」オムニチャネルを構築しようとしているのは、そのためです。

 時代のニーズに応じたやり方をすれば必ず前進できる。努力することなく、「業績が上がらない」は、弁解にもなりません。

AERA 2015年2月9日号より抜粋