女性がときめくシチュエーションとして定着した「壁ドン」。でももちろん、すべての女性がときめくわけではない。その差は一体、何から生まれるのだろうか。

 男性が女性を壁際に追いつめて壁に片手をドンとつき、俺さま言葉で迫る「壁ドン」。今や、女子の憧れのシチュエーションとなっている。でもちょっと待って、と記者(36歳、独身、女子)は言いたい。「壁ドン」って一体、何がいいんでしょう。

「壁ドン萌え」が理解できない女子はほかにもいた。外資系企業に勤める女性(37)は言う。

「パーソナルエリアを侵害して、さらに首元を狙ってドンですよね。本能が拒否します」

 大学教員の女性(36)も、萌える心理がわからないという。

「上から目線で頭悪そうなセリフをささやかれたら、百年の恋も冷めるんですけど」

 モテない三十路(みそじ)女のひねくれた意見だと決めつけないでほしい。綾瀬はるかだって遠藤久美子だって、「現実では引く」という趣旨の発言をしている。

だが、やはり多くは「壁ドン」肯定派。人材育成会社のマネジャーを務める女性(40)は壁ドンが大好き。彼女にとって最高なのは、地位も権力もない若い男性の壁ドンだという。

「壁ドン」にときめく者とときめかざる者、この差は何に由来するのか。ゆうメンタルクリニックのゆうきゆう総院長は言う。

「壁ドンを歓迎する女性は、心の中に『支配されたい欲求』があると考えられます。狭い空間に押し込められて上から見つめられるという状況に『プチ監禁』『プチ支配』のような錯覚を抱き、M的欲求を満たしているのかもしれません」

 では、ときめかない女性は?

「男性ホルモンが多いというか、男性への対抗心が強いということではないでしょうか」

 武蔵野学院大学・大学院教授で脳科学者の澤口俊之さんの見方はこうだ。

「壁ドンは、男性性が高い男性がやってこそ成立する。こういう男性は、一度壁ドンで女性を落としたらあちこちで同じことをします。結婚には向かないタイプ。拒否反応を示す女性のほうがむしろ正常だと思いますよ」

AERA 2015年2月9日号より抜粋