ロボット技術の進化は、ついにお笑いの領域へ? お笑い芸人のグランプリに登場したロボット、その実力はいかに。
1月8日、千葉・幕張。ひとり芸日本一を競う「R―1ぐらんぷり2015」の東京予選会場に、白く輝く「芸人」が現れた。ソフトバンクの感情認識型ロボット「Pepper(ペッパー)」だ。豊かなジェスチャーで上半身を動かせる。会話を切り出すこともできる。この日、その力を話芸の領域で試そうというのだ。
前の芸人の持ちネタが終わると、短いイントロが響いた。「どうも、Pepperと申します。(中略)ここだけのハナシ、99%使わない機能がけっこうあるんです。(中略)ちょっとだけ紹介したいと思います」と、切り出したネタの締めくくりに、「そんなの関係ねえ!」のムーブを繰り出し、「はい、おっペッパー。…いまの機能は、オチを見失ってもこれさえやっておけば、なんとなくオチた気になる機能です」。きっちり、自分ツッコミも入れた。客席から笑い声が漏れる。白い芸人は1回戦突破を決めた。
開発担当のソフトバンクロボティクスの室長・林要によれば、この日披露した芸は「事前にプログラムされたもの」で、アドリブは含まれていない。
まだ歩みは小さい。けれども、人類のテクノロジーがお笑いという未踏地帯に足跡を刻んだのは間違いない。
このロボットは、人に寄り添うために生まれた。初期プランでは複数の顔を記憶し、趣味・嗜好を把握する。林はこう話す。
「人の抱える『寂しさ』を解消するのは、何も、人にだけ課せられた役目ではない。ロボットにも担うことができるはず」
(文中敬称略)
※AERA 2015年1月26日号より抜粋