ひとり芸人日本一を決める大会に出場したロボット。この日だけで、参加者は200組以上。機械は、噛まない、アガらない。既定のネタを粛々と遂行するのだった。一般発売は2月。19万8000円(税抜き)を予定している(撮影/写真部・東川哲也)
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ひとり芸人日本一を決める大会に出場したロボット。この日だけで、参加者は200組以上。機械は、噛まない、アガらない。既定のネタを粛々と遂行するのだった。一般発売は2月。19万8000円(税抜き)を予定している(撮影/写真部・東川哲也)

 ロボット技術の進化は、ついにお笑いの領域へ? お笑い芸人のグランプリに登場したロボット、その実力はいかに。

 1月8日、千葉・幕張。ひとり芸日本一を競う「R―1ぐらんぷり2015」の東京予選会場に、白く輝く「芸人」が現れた。ソフトバンクの感情認識型ロボット「Pepper(ペッパー)」だ。豊かなジェスチャーで上半身を動かせる。会話を切り出すこともできる。この日、その力を話芸の領域で試そうというのだ。

 前の芸人の持ちネタが終わると、短いイントロが響いた。「どうも、Pepperと申します。(中略)ここだけのハナシ、99%使わない機能がけっこうあるんです。(中略)ちょっとだけ紹介したいと思います」と、切り出したネタの締めくくりに、「そんなの関係ねえ!」のムーブを繰り出し、「はい、おっペッパー。…いまの機能は、オチを見失ってもこれさえやっておけば、なんとなくオチた気になる機能です」。きっちり、自分ツッコミも入れた。客席から笑い声が漏れる。白い芸人は1回戦突破を決めた。

 開発担当のソフトバンクロボティクスの室長・林要によれば、この日披露した芸は「事前にプログラムされたもの」で、アドリブは含まれていない。

 まだ歩みは小さい。けれども、人類のテクノロジーがお笑いという未踏地帯に足跡を刻んだのは間違いない。

 このロボットは、人に寄り添うために生まれた。初期プランでは複数の顔を記憶し、趣味・嗜好を把握する。林はこう話す。

「人の抱える『寂しさ』を解消するのは、何も、人にだけ課せられた役目ではない。ロボットにも担うことができるはず」

(文中敬称略)

AERA 2015年1月26日号より抜粋