そごう・西武「妄想力で創り出せ」そごう・西武 自主商品部開発部 アベックモードチーフバイヤー 鶴沢良二(46)※そごう横浜店で撮影撮影/写真部・東川哲也
そごう・西武
「妄想力で創り出せ」

そごう・西武 自主商品部開発部 アベックモード
チーフバイヤー 鶴沢良二(46)
※そごう横浜店で撮影
撮影/写真部・東川哲也

 アエラにて好評連載中の「ニッポンの課長」。

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 現場を駆けずりまわって、マネジメントもやる。部下と上司の間に立って、仕事をやりとげる。それが「課長」だ。

 あの企業の課長はどんな現場で、何に取り組んでいるのか。彼らの現場を取材をした。

 今回はそごう・西武の「ニッポンの課長」を紹介する。

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■そごう・西武 自主商品部開発部 アベックモード チーフバイヤー 鶴沢良二(46)

 足を踏み入れるとほっと心がなごむのは、フロアにたたずむマネキンたちが、寄りそうカップルだからだろう。

 明治学院大学法学部卒。DCブランドで固めて学生時代を過ごした鶴沢良二が仕切るのは、40~50代の夫婦・カップルがターゲットのファッションブランド「アベックモード」。専属のデザイナーやパタンナーら社員7人でつくる、そごう・西武初のSPA(製造小売業)手法を採り入れたブランドだ。

 女性がボタニカル柄のワンピースをまとえば男性も同柄のシャツを。女性がマリンブルーのスカート姿なら、男性は同じ色のカーディガンを肩に巻いて──。

「ペアルックなんて恥ずかしいと思うでしょうが、大人は別。長年ともに歩んできた夫婦は、“さりげなく同じ”がかっこいい」

 色や素材など、ちょっとした装いのペア感で“調和のとれた大人のふたり”を演出する。

 ゼロからつくるだけに、こだわるのは、一着一着に込める「ストーリー」だ。

 子育てが一段落し、時間ができた夫婦は休日をどう過ごすのだろう? 美術館を巡るか、ドライブに出かけるか、公園を散歩するか……。妄想力をフル稼働させ、行動シーンに合ったファッションをカタチにしてゆく。

「夫婦の行動パターンは千差万別。24時間、次はどんな服をつくろうかと頭が動いている」

 アパレル業界では異例の2週間サイクルで新作を出すのは、ペアの楽しさを知ったふたりのテンションを下げさせないため。売り場を婦人服、紳士服に分けず、男女共同フロアにしたのは、ふたり一緒に買い物する時間を楽しんでほしいというメッセージだ。

「百貨店って、昔は訪れるだけでドキドキワクワクする場所だったはずだから」

 つれあいへの恋心の再燃と、百貨店の復権を夢見て、鶴沢は今日も想像の海を泳ぐ。(文中敬称略)

※本稿登場課長の所属や年齢は掲載時のものです

(編集部・吉岡秀子)

AERA 2014年7月28日号