上海市の高級老人施設「親和源」のレストラン。セルフサービスで数十種類のおかずから選んだ料理を、ゆっくり楽しむ中国のお年寄りたち(撮影/編集部・野嶋剛)
上海市の高級老人施設「親和源」のレストラン。セルフサービスで数十種類のおかずから選んだ料理を、ゆっくり楽しむ中国のお年寄りたち(撮影/編集部・野嶋剛)

 超高齢化社会を迎える中国。だがそこを商機ととらえ、まるでリゾートのような高級老人ホームを展開する企業もある。中国で最大級の有料老人ホーム「親和源」(上海市浦東新区)を取材した。

 まず施設をぐるっと案内された。10分ぐらいで終わるかと思っていたら、1時間も歩かされた。カルチャーショックとでも言うのだろうか。私の中の「老人ホーム」の概念が、音を立てて崩れていった。

 敷地面積は、およそ東京ドーム2個分の約9万平方メートル。そこに16棟の高層ビルが林立し、うち12棟の834部屋に約1300人の高齢者が暮らす。

 食堂はピカピカのセルフサービスのカフェテリア風。施設外の人も診察が受けられる病院もある。広々とした卓球場や書道の練習場、カラオケ室、読書室。一番人気はゲートボール場だという。さすがにあまり使わないらしいが、立派なバスケットボールのコートまで。スパ、プール、ジムの入ったビルもある。

 部屋は広めの1LDKで、自炊もできる。中国の分類では「老人公寓(老人マンション)」と呼ばれる施設だが、「老人リゾート」と言ったほうがふさわしい。親和源の華山副総裁は、取材に対してこう強調した。

「豪州のリタイアメント・ビレッジを参考にしました。我々は市場化した老人施設です」

 意味するところは、金儲け主義とまでは言い過ぎだが、単なる福祉ではなく、あくまでビジネス重視、ということだ。

 親和源は会員制。華さんによれば、6年前の開所時、標準タイプの部屋の会員権は50万人民元(約900万円)だった。いまでは118万元(約2120万円)に値上がりした。老人たちにとって、「入所」は「投資」でもあるのだ。

AERA 2014年10月6日号より抜粋