上司による査定評価は、給与や昇進に直接響く。主流は目標管理制度と行動評価の2本立てだ。ただし、上司の好き嫌いで決まりがち。だったら、それを逆手に取ってガッツリ、評価を勝ち取ろうじゃないか。

 人事コンサルティングを手掛けるwealth share(ウェルスシェア)代表取締役社長の鈴木智之さん(36)によると、社員一人ひとりが目標を明確に掲げてその達成具合を評価する「目標管理制度」はここ十数年、日本の会社に定着した。だが、業績は、たまたまいい客が付いたなど運に左右されやすく、不公平が生じやすい。そこで、最近は目標管理の結果を賞与に反映させ、ベースの給与と昇進・昇格は「行動評価」で決める会社が大多数になりつつある。

 作家でコンサルタントの城繁幸さん(40)は、「今までは大手を中心に、若手には評価に差を付けない傾向が強かったのが、早い段階から評価に差が付くようになった。一方、組織のフラット化により年々部課長ポストが減る中、一度でもB評価(平均的査定)に落ちると、課長以上に昇進させない会社も増えています」と話す。

 つまり、課長職以上への昇進は、自分の「行動」に掛かっているといっても過言ではない。そして、行動評価を「テクニックで上げる余地は十分にある」(城さん)のだ。

「上司に『若いころの俺に似ている』と言わせたら勝ち」

 金融機関に勤務するマコトさん(35)は、そう言って憚(はばか)らない。同期で一番早く課長職に昇進できたのは、そんな「上司のモノマネ作戦」の効果が大きい。

「事務処理はいい加減だけど、顧客への接待は抜かりない上司の時は、同様の『宴会キャラ』になりきる。社内会議を重視する上司に仕えた時は、会議室に一番に入って一番前に座る『優等生キャラ』を演出。カメレオンのように、姿を変える手法でサバイバルしてきました」

『「理不尽な評価」に怒りを感じたら読む本』(ダイヤモンド社)著者の藤本篤志さん(53)によると、「対比誤差」といって、人は自分自身を基準に相手との差を測り、その人の評価を決めることが往々にしてある。

「『私と比べたら、この人はこの部分がまだまだだな』といった具合に、自分基準で相手を判断する。結果として自分と似たタイプを評価し、反対の特性を持つ部下の評価が低くなりがち。組織のバランスを欠くという意味で評価ミスになりかねませんが、それを逆手に評価を上げることは十分に可能です」(藤本さん)

AERA 2014年9月1日号より抜粋