4月25日の東京証券取引所。企業の担当者が記者クラブの棚に決算資料を投げ込んでいく(撮影/写真部・東川哲也)
4月25日の東京証券取引所。企業の担当者が記者クラブの棚に決算資料を投げ込んでいく(撮影/写真部・東川哲也)

 東京・兜町の東京証券取引所が、最もにぎわう季節が、今年もやってきた。そう、決算発表だ。2014年3月期、多くの日本企業は過去最高益を見込んでいる。

 アエラは今回、大和証券の協力のもと、5期以上連続して最高益を更新する企業や、従業員1人あたりの業種別経常利益ランキングをまとめてみた。連続最高益の企業を調べたのは、リーマン・ショックにも負けなかった企業を探るためだ。結果は輸出企業が打撃を受け、小売りなど国内市場で稼ぐ内需型企業が上位を占めた。それでも、不景気な中で稼ぎ続けるには、それなりの理由があるはずだ。

 そうやって見ていくと、稼ぐ企業にはある共通点があることが分かってきた。

 そうした企業のひとつ、ヤフー。4月25日に発表した14年3月期決算は、経常利益が1976億円で過去最高益だった。これによって、1997年の株式公開から17期連続して、最高益を更新したことになる。検索エンジンの利用率は言わずと知れた国内トップ。ただ、昨年発表したヤフーショッピングの出店無料化で、売り上げは一時的に大きく減った。しかし、それをカバーする力があった。その一つが広告事業だ。
 
08年、新しい広告サービス「ヤフーディスプレイアドネットワーク(YDN)」の原型が生まれた。ヤフーのポータルサイトや、契約するサイトに、ネット利用者がアクセスしたとき、その利用者に興味があるだろう広告を表示する仕組みだ。そのサービス収入が13年度、伸びたのだ。その立役者となったのは、11年に責任者になった荒波修さん(43)だ。

 新しい広告サービスが精彩を欠いていたことを問題視し、営業や開発など関連部署を横断したチームを設けた。広告事業はどうあるべきか、徹底的に議論し、「何となく物事が決まる雰囲気」を変えていった。

 稼ぐ企業の第一の共通点は、「新事業の成功」だ。大和証券のストラテジスト・守田誠さんは、成長し続ける企業の要件として「新商品やサービス、新事業を絶えず生み出し、成長させること」を挙げる。稼ぎがあれば安住したくなるのは人間の性(さが)だが、新しい事業に挑戦する姿勢がなければ成長は望めない。

 ヤフーは12年、社長に宮坂学氏が就任した。「爆速経営」を掲げ、安定志向に陥りがちだった組織に、スピード感をもたらした。意思決定の方針は、「迷ったらワイルドな方に」。最高財務責任者の大矢俊樹さん(44)は、「現状のままでいいのか常に考えている」と話す。

AERA  2014年5月5日―12日合併号より抜粋