横浜DeNAベイスターズ社長池田純(38)選手と球団、経営陣と職員、球団とファンをつなげることができたと思う。開幕に合わせ、集まったアイデアを『次の野球』(ポプラ社)として出版した(撮影/高井正彦)
横浜DeNAベイスターズ社長
池田純(38)

選手と球団、経営陣と職員、球団とファンをつなげることができたと思う。開幕に合わせ、集まったアイデアを『次の野球』(ポプラ社)として出版した(撮影/高井正彦)

 斬新なアイデアで再建の道を進んできた横浜DeNAベイスターズ。その裏には、先頭に立つ「野球素人」の存在があった。

 横浜DeNAベイスターズ社長の池田純(38)は一昨年のシーズン終了後、選手やコーチ、球団社員など全ての球団関係者約250人から、球団改革のためのアイデアを募った。テーマは「次の野球」。立場や部署の垣根を超えて、人と人、組織と組織をつなげることで、球団全体が次の一歩を踏み出す原動力にしようと考えた。

「どうすれば人々はスタジアムに足を運んでくれるのか。野球が魅力のあるスポーツだと証明する必要がありました」

「野球を観ながら足湯」「ファンがスタメンを決める日」「優勝ビールかけ参加権付きチケットの販売」……。短期間で600を超える声が各部署から集まった。中には、選手自身から出た「選手の年俸をファンが決める」など、誰が考えても実現不可能な“妄想”も含まれていたが、そんなことはどうでもよかった。何を守り、何を壊し、何を作り出すのか。「継承と革新」の狭間で揺れるベイスターズの再スタートだった。

 弱小球団の代名詞とまで言われたベイスターズの“再建”を、親会社ディー・エヌ・エーにいた池田が託されたのは、2011年末。しかし当初、球団は大きな問題を抱えていた。98年を最後に優勝はなし、成績は万年Bクラス。前オーナー会社からの事業継承とはいえ、過去のドラフトの資料やリポートの類いはほとんど残されていない。組織はバラバラで、現状を改革しようと乗り込んだ池田に対する現場の視線は冷ややかだった。最初の仕事は、勝敗以前に球団をどこにでもある「普通の会社」に立て直すことだったという。

 初年度から、池田は自ら「試合に負けたら入場料の全額返金」というプロ野球史上、前代未聞のキャンペーンを打ち出し、議論を醸した。野球に関して素人である自分が先頭を切ることで、古い慣習を断ち切ろうとしたのだ。その延長上に「次の野球」のアイデア募集があった。

「人と人、組織と組織が『次の野球』という新しい目標でつながれたことで、日常的に部署を超えてアイデアを出し合い実践する、“全員野球”が可能になりました」

AERA 2014年4月28日号より抜粋