●好物件は人気集中

 左上の表は現金をタワマンにして持っていた場合の相続税額の違いだ。遺産総額2億円の納税額は、全額が現金なら1350万円だが、これを480万円にすることができる。3億円持っている場合は1千万以上も節税できる計算になるという。

 多くの場合、低層階より高層階の方が物件価格は高い。しかし、いざ相続となると、同じ面積なら評価額は同じ。低層階が4千万円で高層階が6千万円でも、評価額が1200万円だったら、評価減は高層階が8割、低層階は7割。断然、高層階の方が評価減には有利だ。

 だが現在、東京都心のタワーマンションの需給は逼迫している。マンションの購入意欲は衰えず、都心の地価も上昇傾向だ。品川に15年に竣工予定の、とあるタワマンは、約350戸に対し、1600件以上の資料請求が押し寄せているほどだ。

 このような状況では物件の価格が適正かどうかを見極めるのが素人では難しくなり、実際の資産価値より割高な価格で買ってしまいかねない。

 自分の気に入った土地に、気に入った家を買い一生住むつもりなら、どこでどんな物件をいくらで買っても、納得するかもしれない。だが、節税を狙って買うなら、そうはいかない。

 いざ買ってせっかく評価減を受けても、相続が終わって現金化しようと売却した際、売値が買値より安かったら意味がない。例えば5千万円の物件を買ったのに1千万円でしか売れないこともありうる。できるだけ同じような価格で売買したいもの。

●築5年前後が低リスク

 物件を選ぶ際に重要なのは、「値下がりリスクの低い物件」の視点を持つことだ。まずは新築か中古、どちらがいいか。沖氏は今の経済状況なら、中古だという。

「資産インフレしている際は新築価格が中古価格よりも早く上昇します。中古なら適正価格が周辺の物件などからわかります。築5年ぐらいまでで相場よりも割安な物件を丹念に探すことです」(沖氏)

 エリアは、都心近郊の駅に近い場所に絞ろう。千代田区、中央区、港区、新宿区、文京区、台東区、江東区、品川区、目黒区、渋谷区の「都心10区」と「環七と荒川の内側」が目安だ。

「値下がりのリスクが少ないのは、買い物難民、帰宅難民など『難民』というキーワードから、疎遠の場所です。隣駅が近く、数本の沿線が通っているような通勤や通学に便利な場所は、どんな状況でも人口が保たれる確率が高い。となると、商業施設が維持される可能性も高く、値下がりのリスクも抑えられます」(沖氏)

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