大学講師太田厚志さん(54)東京都生まれ。日本留学中の韓国人女性と知り合い結婚。会社を辞め大邱に住み始めて約25年になる。娘と息子がいる(撮影/Lim Dang)
大学講師
太田厚志さん(54)

東京都生まれ。日本留学中の韓国人女性と知り合い結婚。会社を辞め大邱に住み始めて約25年になる。娘と息子がいる(撮影/Lim Dang)

 外交や歴史観で問題を抱える日韓関係。子育て、人間関係、歴史認識などで生じる夫婦間の「壁」とは。

 一見、似ている日本人と韓国人。だが、「そこが双方誤解のもと。日本と韓国は社会のつくりが全く違う」と話すのは太田厚志さん(54)だ。韓国人女性と結婚、妻の出身地・大邱(テグ)広域市で約25年暮らし、日本語などを学生に教えてきた。現在は永進(ヨンジン)専門大学・外国人主任講師。太田さんは語る──。

 韓国で暮らし始めたときは戸惑いました。人間関係のあり方が日本とあまりに違うから。日本人はまず「なごやかな雰囲気」を作ろうとする。ところが韓国人はそうじゃない。むしろそれに生理的に反発する。相手の立場を察することもない。空気など読まない。個人と個人のぶつかり合いです。

 家での子どもの教育も、日本人だと、子どもにまず教えるのは「人様に迷惑をかけるな」。でも韓国は違う。うちは大家族で、姑が、私の子どもを含む孫たちを教育しましたが、

「家族は一体だ。家族には忠誠を尽くせ。でも一歩外に出たら他人にいくら迷惑をかけてもいい。どこまでも自分を主張し、堂々と、自分のやりたいことを貫け。そして勝ちなさい」

 と教えました。徹底した個人主義です。人間同士の一体感など求めない。目指すのは、欲望の渦である現実社会で、あの手この手で生き抜いて成功すること。自由主義なんです。一方で、韓国社会は脱線行為をしてしまった人間には寛容です。黙って放っといてくれる。

AERA  2014年3月24日号より抜粋