小泉元首相の発言などで揺れる原発問題。再稼働するにしろ廃炉にするにしろ、問題となるのが放射性廃棄物の処分だ。原発のある他の国ではどのように処理しているのか。2013年夏、「廃炉先進地」のドイツを訪ねた。

 首都ベルリンから車で北に約3時間。グライフスバルト原発1~5号機(各44万キロワット)の広報担当者は、こう話す。

「1995年から始めた廃炉作業はほぼ終わりつつある」

 敷地内の町工場のような場所で、宇宙服のような防護服を着た作業員が研磨材を機器に吹き付けて表面に付いた放射性物質を取り除く除染をしていた。廃炉作業で180万トンの廃棄物が生じたが、除染などで放射性廃棄物の量を減らし、最終的に1万6千トンに抑えるという。

 敷地内にある中間貯蔵施設に機器を運び出す作業は14年をめどに終える。訪ねた時には、五つの原子炉と22個の蒸気発生器が保管庫にずらりと並べられていた。原子炉は円筒形で高さ約12メートル、重さ214トン。蒸気発生器も同じぐらいの大きさだ。機器から1メートルほどの場所での線量は毎時50マイクロシーベルト。20時間で1ミリシーベルトに達する値だ。

 ドイツでは11年6月に脱原発を決めた際、17基のうち8基の運転許可を取り消し、残る9基も22年までに許可を失う。この他にも廃炉作業を進めてきた原子炉があり、終了したものも含めると19基になる。廃炉ビジネスに乗り出した電力会社もある。

 日本の法規制では、原子炉の寿命は原則40年。安全基準に合わせた設備投資を検討すると、経済性の面から廃炉の決断を迫られる原子炉が出てくると見られている。日本も「廃炉の時代」を迎えざるを得ない。

 廃炉作業は運転終了後、使用済み燃料を取り出し、施設内の放射能の分布を確かめ、除染をしながら取り壊しを進めていく。基本的な工程は世界中同じだ。

AERA 2013年12月30日-2014年1月6日号より抜粋