11月26日の緊急会見で掲げた「借用証」。見た目の“やっつけ感”通り、「素人のメモ」「小学生レベル」など評価は散々だ (c)朝日新聞社 (撮影/飯塚晋一) @@写禁
11月26日の緊急会見で掲げた「借用証」。見た目の“やっつけ感”通り、「素人のメモ」「小学生レベル」など評価は散々だ (c)朝日新聞社 (撮影/飯塚晋一) @@写禁

「徳洲会」から5千万円もの現金を受け取ったことが大きく報じられている猪瀬直樹知事。選挙資金の提供だったのか、個人的な借り入れだったのか──その決定打として出してきたのが、11月26日の会見で猪瀬知事本人が持ち出してきた「借用証」である。ところが、そこには「5000万円」という金額に日付、署名こそあるものの、返済期限も実印も印紙もない。後から慌てて作ったのでは、と勘繰られても仕方のないシロモノだった。政治資金問題に詳しい岩井奉信(ともあき)・日本大学法学部教授(政治学)は、こう語る。

「現金でやりとりするなど、表に出せないカネなんだろうという印象ですね。広く言えば選挙資金だし、悪く言えば裏ガネ。しかも自分自身が取りに行っているから言い逃れしにくい。選挙のためとなれば、公選法違反の共同正犯が成立するので、猪瀬さんに即責任がいく可能性がある。百歩譲ったとしても道義的責任は免れられません。無利子・無担保で徳洲会という利害関係団体から借りるということは、許されるわけがない。『厚意で貸してくださるのに、お断りしたら申し訳ない』というのは、もはや政治家としての資質の問題。本来、断るべきです」

 もともと徳洲会の徳田虎雄理事長は、石原慎太郎前知事と自他ともに認める「盟友」の関係だ。それが、一面識もなかった猪瀬氏に多額の資金提供をしたことについて、『トラオ~徳田虎雄 不随の病院王』の著者でジャーナリストの青木理氏は、

「半分は石原氏の後継だから、半分は次の都知事と繋がっていて損はない、という考えだったのだろう」

 実際、都知事選で猪瀬氏の資金繰りは厳しかったようだ。

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