楽しい絵本の読み聞かせの時間も、「保育必要量」としてカウントされる時間の一部。子どもの保育が、時間ごとに計算されるようになっていく(撮影/今村拓馬)
楽しい絵本の読み聞かせの時間も、「保育必要量」としてカウントされる時間の一部。子どもの保育が、時間ごとに計算されるようになっていく(撮影/今村拓馬)

 昨年8月10日、社会保障・税一体改革関連8法案の中のひとつとして、「子ども・子育て関連法」が参議院で可決・成立した。関連法の中心は「子ども・子育て支援法」という新しい法律と、改正された児童福祉法などだ。

 この「子ども・子育て支援法」などに基づき、日本の子育ての制度は大転換する。きわめて複雑な制度で、利用の仕方も今とはかなり変わるが、残念ながらそのことが保護者の間にはほとんど知られていない。導入されたときの混乱が懸念される。

 では、新制度はどう変わるのか。一番変わるのが、保育所、認定こども園、一部の幼稚園の利用方法だ。00年に導入された介護保険制度とよく似た利用方法になる。

 新制度の細かい設定については、現在も国の「子ども・子育て会議」で審議中で完全には決まっていない。現段階でわかっているのは次のような変化だ。まず、保護者は子どもを通わせたい保育施設が、「子ども・子育て支援法」に基づく新制度の財源で運営される施設かどうかを知る必要がある。新制度に基づくかどうかで、手続きが変わってくるからだ。

 認可保育所のほか、現在4タイプある認定こども園は、新制度でもほぼそのまま残る。認可外保育所も認可保育所などとは違うお金の枠組みになるものの、新制度の財源で運営される。幼稚園は新制度で運営される園も出てくる一方、現在と同じように「私学助成」という補助金で運営される園とに分かれる。

 子どもを通わせたい施設が、保育所や認定こども園、新制度で運営される幼稚園だとわかったら、今度は住んでいる市町村の窓口に行き、子どもの「保育必要度」を認定してもらわなければならない。お年寄りの介護の必要度を測る介護保険の「要介護認定」と同じように、その家庭の子どもにどれくらいの保育が必要なのかを市町村に認定してもらうのだ。

 現時点で決まっているのは、子どもたちが「1号」「2号」「3号」という三つの区分に「認定」されるということである。「1号認定子ども」は、満3歳以上で就学前の保育の必要がない子どもたちだ。新制度で運営される幼稚園に通う子どもたちが当てはまる。「2号認定子ども」は満3歳以上で保育の必要性の認定を受けた就学前の子ども、「3号認定子ども」は満3歳未満で保育の必要性があると認定された子どもで、現在保育所に通う0~2歳が当てはまる。

 この「2号」「3号」、つまり保育所に通うことを認められた子どもたちは、さらに親の労働時間によって「長時間」「短時間」という「保育必要量」の区分けが加えられる。私学助成で運営される幼稚園に通う子どもたちには、認定を受ける必要はなく、こういった区分はない。

「保育が必要」と認定されるのは、親が働いている家庭が中心。シングル親家庭や虐待の危険のある家庭は、優先して入所できるように自治体が枠を設けることになっている。認定を受けた保護者には、「優先」枠の有無のほか、認定区分と、保護者負担(保育料)区分を記載した「支給認定証」が渡される。

 だが、介護保険の前例を見れば、申請から認定証が届くまでには1カ月程度はかかると予想されている。現在でも保育所に入るのが困難で、入所結果が復職の時期ギリギリまでわからずに困る人が大勢いる状況なのに、申請以前に「認定」が必要となると、そのことを徹底させるために混乱が起きるだろう。

AERA  2013年9月16日号