まるで湖畔に浮かぶリゾートホテルのように見える関西電力高浜原発。対岸には154人が暮らす集落と釣り客向けの施設がある(撮影/編集部・塩月由香)
まるで湖畔に浮かぶリゾートホテルのように見える関西電力高浜原発。対岸には154人が暮らす集落と釣り客向けの施設がある(撮影/編集部・塩月由香)

 7月8日、原発の安全性に関する新しい規制基準の施行を受け、電力各社が再稼働を申請した。火力発電の燃料費で赤字がかさんだほか、原発の維持費にも多くの額を費やすことになり、各社は一刻も早く再稼働したいところだろう。

 原子力規制委員会は「経営問題は考慮しない」とするものの、「できるだけ効率よく速やかに審査する」姿勢だ。田中俊一委員長は、新基準を「世界一厳しい基準になった」と自賛したが、火山や活断層がひしめき、世界一の地震列島に立地する点を考えれば、「それで十分か?」と指摘する声は根強い。

 例えば、新基準で燃えにくい電気ケーブルの使用が義務づけられたが、運転開始から30年以上の老朽原発にはそれが使われていない。交換に巨費がかかるため、各社は「延焼防止の薬剤を塗っています」と説明するが、それで本当に事足りるのか。

 もっとも、今回、各社が再稼働を願い出た原発は、いずれも「優等生」の炉と言える。高台などにあり、厳しい津波対策も不必要とされる日本海側や瀬戸内海側に立地し、運転から30年未満。どれも、事故を起こした福島の沸騰水型とは異なる加圧水型だ。加圧水型は事故の際、炉内の圧力が高くなりにくいため、フィルター付き排気設備の設置が5年間猶予される。

 さらに、審査で重要になるのが原発一帯の活断層の評価だが、地元や専門家の声を総合すると、「大飯と高浜は伊方や川内より厳しい審査になる」とみられ、関電の業績回復はその分、九電より遅れそうだ。株式市場では「今後、各社の業績や配当を左右するのは活断層」との見方が出ており、新基準の下での地質調査の結果に株価が敏感に反応しそうだ。

AERA 2013年7月22日号