「マイナスからプラスに変わった」。安倍首相は、参院選でアベノミクスの成果を最大限にアピールして、ねじれ解消を狙う(7月4日、福島市での第一声) (c)朝日新聞社 @@写禁
「マイナスからプラスに変わった」。安倍首相は、参院選でアベノミクスの成果を最大限にアピールして、ねじれ解消を狙う(7月4日、福島市での第一声) (c)朝日新聞社 @@写禁

 アベノミクスを支える大きな要素である「成長戦略」。実は、この成長戦略こそ「官僚支配」の復活を如実に表している。

 安倍晋三首相は「(アベノミクスは)今66点だ。成長戦略を実行していくことで100点を目指す」と意気込むが、元経済産業省官僚の古賀茂明氏が次のように解説する。

「安倍首相は『民間活力の爆発』と言いましたが、内容は逆に『官僚の活力の爆発』でした。『大胆な事業再編』といいますが、その実、国主導の再編を意識しています。“介入派”経産官僚の夢ですよ。しかし、国主導では、時代遅れの企業を延命させかねず、国際競争には勝てません。過去の政策の焼き直しも多く、市場からは評価されませんでした。それで慌てて『設備投資減税』を打ち出しましたが、これも法人税の定率減税でないところがポイント。条件は役所と族議員、自民党税調が決める、という意味です」

 つまり「成長戦略」で、自民党・官僚機構・経団連といった政官財の利権構造の強化をうたってしまったわけだ。

 しかも、巧妙な言い換えも目立つ。昨年の衆院選の公約には、原発の再稼働を順次判断する方針を掲げつつ、「原子力に依存しなくてもよい経済・社会構造の確立を目指します」と書いていたが、今回の参院選では消滅。成長戦略では「(安全性が確認された場合)政府一丸となって最大限取り組む」と記し、なし崩し的な推進に転じた。TPP(環太平洋経済連携協定)も「『聖域なき関税撤廃』を前提にする限り、TPP交渉参加に反対」と主張していたが、安倍首相は「国益は断固として守る」と交渉参加を決めてしまった。

AERA 2013年7月15日号