鯖ナイトの参加者たちは、職業も趣味もバラバラだが、サバが好きだというだけで、すぐに打ち解ける。サバ料理を前にすればこの笑顔(撮影/写真部・東川哲也)
鯖ナイトの参加者たちは、職業も趣味もバラバラだが、サバが好きだというだけで、すぐに打ち解ける。サバ料理を前にすればこの笑顔(撮影/写真部・東川哲也)
受け付けで配布される名札の裏は「サバカルタ」。参加者は、文字に合ったイラストを描いて提出する(撮影/写真部・東川哲也)
受け付けで配布される名札の裏は「サバカルタ」。参加者は、文字に合ったイラストを描いて提出する(撮影/写真部・東川哲也)

 数カ月に一度、東京都品川区の西小山駅周辺で開かれる、ちょっと怪しげなイベントがある。参加の条件はただひとつ、「サバが好き」だけ。サバを食らい、語り、描き、歌う、その名も「鯖(さば)ナイト」だ。

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 戸を開けると、熱気がどっとあふれてきた。中では、なぜか「月花(つきはな)」コールが。サバ好きにはおなじみ、マルハニチロ食品のサバ缶シリーズだ。しかし、サバ缶一つでこんなにも盛り上がれるとは、この人たちは一体…。ちょっと引き気味で中へ。

 テーブルには、参加者手作りのサバ料理がずらり。しめサバ、燻製、焼きサバの煮付け、へしこピザ、カレーなどなど。定番メニューや日本各地の郷土料理のほか、オリジナル料理もある。

 しばらくすると、前方でサバ料理の紹介が始まった。サバが日常食だという鳥取の県職員、岩谷圭さん(35)が郷土食「焼きサバの煮付け」を紹介すれば、他のメンバーも「鳥取にもひけを取らないおいしさですよ」と、次々に前へ。パッケージデザイナーの藤きみよさん(54)は静岡産のサバと2種類の酢で作った「しめサバ」を、テレビ局に勤める片又直樹さん(39)は月花のサバ缶で作った「炊き込みご飯」を披露。サバのおいしさを引きたてようと工夫した様子が伝わってくる。

 その後も、トークリレーやカルタ作りなど、とことんサバにこだわるプログラムが続く。トリは「サバンド」。サバニストを自称するクリエイターの小林崇亮(たかあき)さん(38)と、俳優のロッキー松尾さんが、サバへの愛を熱唱。曲は、有名なアメリカ映画の主題歌の替え歌で「サバンド・バイ・ミー」。

 お世辞にも演奏はうまいとは言えないが、なにしろおかしい。歌詞カードを配られた参加者たちも大笑いしながら合唱し、盛会のうちにお開きとなった。

 毎回こんな調子で進む鯖ナイト。回を重ねるごとに参加者が増え、6月は50人に。初めて参加したというヨガインストラクターの山田菜穂子さん(40)は、

「異業種の人たちともすぐに仲良くなれる。サバが私の世界を広げてくれた。サバがますます好きになりました」

AERA 2013年7月8日号