山高ければ谷深し。急上昇もつかの間、5月下旬には下げ始めた日経平均株価。アベノミクスの「夢」は、もはや終焉を迎えたのか!? 株式市場の今後のシナリオはどうなるのか、専門家に聞いた。

「参院選後、改革も何もできないことがわかれば、株価1万円割れの状況もあり得る」

 と、欧州系証券会社の株式セールス幹部が解説する。

「安倍さんは心の奥底では改革嫌いで、本当にやりたいのは憲法改正だけでは?と外国人に思われ始めた。選挙が終わると憲法改正に向けて世論の支持を得るために、ますます改革はできなくなるよ」

 海外投資家が求める「改革」とは、つまりこういうことだ。

「一言でいえば、外国人が株を買う日本企業が儲かる環境を整備する。法人税引き下げ、従業員の解雇要件の緩和など、企業負担を軽くし、配当を増やして株価を上げることです」(同前)

 しかし、言うまでもなく、海外投資家にとって日本経済にこだわりはなく、ただ相場の変動が大きいほど儲かるだけのことだ。安倍政権は成長戦略で「海外から日本への投資増加」を謳っているが、市場が求めるのは「大胆な規制改革」であり、旧来の自民党支持層とは相いれない。ここに矛盾がある。

 アベノミクスに翻弄される庶民にできることは、一言でいえば「状況を見極める」ことだ。株価乱高下の時代に、素人が手を出すのは自殺行為に等しい。本当に株価1万円割れになれば、「民主政権時代に逆戻り」とも思えるが、実際は元に戻っただけのこと。

 ちょっとした景気に踊って、いまから大きな買い物に手を出すのも、お勧めしない。

 たとえば住宅。都心の地価が上がったミニバブルは、2008年のリーマン・ショックで急落。郊外の地価はいまも下げ止まらず、空き家も増えている。来春の消費増税前に景気が失速すれば、「増税延期」もあり得るため、いま過熱相場で家を買うのは必ずしも「お得」とはいえない。

 中途半端に遅れてバブルに乗った人間は、たいてい痛い目を見る。だから住宅にしろ、株にしろ、バブル崩壊まで「待つ」のが正解だろう。

AERA 2013年6月24日号