金融円滑化法は3月に終了。4月以降も金融機関は相談に応じ、猶予も継続している(撮影/写真部・外山俊樹)
金融円滑化法は3月に終了。4月以降も金融機関は相談に応じ、猶予も継続している(撮影/写真部・外山俊樹)

 週末、ポストに投函される大量の不動産のチラシ。今が買い時……かと思いきや、ローンで痛い思いをすることもあるようだ。

 関東の緑豊かな住宅地に住む50代の自営業、Aさんは、住宅ローンの組み方に泣かされた一人だ。

 住宅を購入したのは、約15年前。子供が生まれて賃貸では手狭になったこともあり、その当時、話題になっていた「ゆとりローン」で3千万円のローンを組んだ。ゆとりローンとは借入時から数年は金利を2%ほどにとどめ、収入が増えるであろう11年後に返済額が大幅に増える。終身雇用、年功序列による昇進と昇給、といったことを前提に考えられたローンだ。

 月16万円返済していたが、12年前、子育てお金がかかるようになってきたので、月12万円ぐらいに返済額を落とした。以降、問題なく返済していたが、経営していた会社の状況が昨年から悪化し閉じた。

 ローンの完済年齢は75歳。妻と一緒に働いてなんとか返しているが、年金暮らしになったら、到底返せない。売却の文字が頭をかすめていたが、プライドが邪魔をして踏み切れなかったという。

 そんなAさんの意識を変えたのは、ネットだった。

「早く相談した方がいい、という声がたくさんあったんです。プライドとか言っている場合じゃない。本当に払えなくなる前に何か手を打つことが大事だな、と考え直したんです」

 そこで今年1月、ネットで見つけた全国住宅ローン救済・任意売却支援協会(全任協)に電話し、ローンの支払いを続けるか売却するかの検討に入った。現在、任意売却の方向で話を進めている。

「返しても返しても終わらない。言われるままにローンを組む怖さを今更ながら知りました。一時期は何も信じられない状況でした。借りる前に返済できる額と期間をきちんと考えておくべきでした」

 そう語るAさんの顔には悔しさがにじんでいた。

 不動産関係者によると、ゆとりローンを組んだ人の6人に1人は、返済計画が破綻する恐れがあるという。ローンを組んだときの経済状況が、そのまま推移するものではないからだ。

AERA 2013年6月10日号