乳がん予防のために乳房を切除したことを告白したアンジェリーナ・ジョリー。

 肌を見せることも多い女優業にもかかわらず、健康な両乳房にメスを入れた決め手は、56歳で卵巣がんで亡くなった母親の存在と、自らの遺伝子検査の結果だった。乳がんと卵巣がんに関係の深いBRCA1という遺伝子に変異が見つかり、乳がん罹患のリスクが87%だと医師に告げられたためと綴った。

 日本では馴染みがない遺伝子検査だが、アメリカでは広く知られている。

 シカゴ大学の「がんリスク・プログラム」で、遺伝子カウンセラーを務めるサラ・ニールセンさんによると、乳がんや卵巣がんのリスク測定の場合、本人の母や姉妹、母親の姉妹など、2親等以内の親族に50歳以下で乳がんや卵巣がんに罹患した人数を聞き、高リスクだと判断した場合にのみ検査を勧めるという。検査を受けない選択も尊重する。

 乳がんや卵巣がんに関連するのはBRCA1とBRCA2と呼ばれる遺伝子。検査は血液か唾液で行い、費用は4千ドルほどだ。家族の病歴でハイリスクと認められれば保険が利く。

 結果が陽性でも陰性でも、必ずカウンセリングを行う。

「陽性でも選択肢が乳房の切除手術しかないわけではない。乳房を切除すれば、乳房や乳首の感覚を失い、再建してもそれは永遠に戻ってこない」

 二つの遺伝子に変異があっても、実際の罹患率は42~60%が一般的だという。

AERA 2013年5月27日号