友達との関係や部活、テストの成績。将来への不安。子どもも様々なストレスに囲まれて生きている。そんな中で健やかな成長を促すにはどうすればいいのか。そこには「褒める・叱るのバランス」のほか、「父親」の存在や「朝食」など、意外な要因が関係していた。

 中学校のスクールカウンセラーを務める碓井真史教授(新潟青陵大学大学院)は、「いろいろな経験をさせて」と呼びかける。ひと昔前は、近所に電話を借りたり、郵便物を預かってもらったり、バスで「降ります!」と運転手に告げたりと、人とかかわらないと暮らせなかった。

「今は“豊かさの副作用”が子どもの成長を阻害していることを重く受け止めて」

 いま育児界では「褒めて育てる」が推奨されているが、「『褒める』と『叱る』のバランスが重要」と指摘するのは、こども心身医療研究所(大阪市)の冨田和巳所長(小児科医)。

「子どもは怒らずに褒めて育てる主義」という母親から、幼稚園で先生に怒られた長男が腹痛や不安を訴えるようになったという相談を受けたことがある。

「子どもの成長にはある程度のストレスが必要なので、褒めるだけでは現実社会に適応していく能力はつかない」

 母親だけでなく、父親の役割も重要だ。子どもの精神的健康度と親子関係を調査している女子栄養大学の平田裕美准教授(発達臨床心理学)によると、父親との会話が、多感な時期の小学校高学年~高校生の精神的な安定感、居心地感につながっているという結果が出た。自分の良さを肯定的に受けとめるなど精神的に安定している子の父親には、「母親と協力して子育てし、子どもの話をよく聞き、自分の考えを一方的に押し付けない」という共通点があった。

 また、平田さんが小学生から高校生まで約800人に調査したところ、朝食を毎日同じ時間に食べている子は精神的に落ち着いており、頭痛や腹痛などの身体症状や睡眠不足やイライラなどが少なかった。生活リズムを整えることが、ストレスに強い子を育てるのに重要なのだ。ちなみに、夕食時間はバラバラでも関連性はなかったという。

 朝ごはんを一緒に食べて「栄養になる親」を目指そう。

AERA 2013年4月29日号