イギリスの元首相、マーガレット・サッチャーさんが4月8日午前(現地時間)、ベッドで読書中に脳卒中で亡くなった。87歳だった。

 イギリスで彼女の自宅前などに花束を抱えて訪れる人は絶えず、キャメロン首相が「偉大な指導者を失った」と述べるなど各界からコメントが寄せられている。ロンドンのバッキンガム宮殿はもとより、主だった関係建物にはいっせいに半旗が掲げられた。

 しかし、一方で彼女の死を歓迎する声が上がっているのも事実である。公式発表されるとたちまちツイッターなどで「気に入った」と反応。ロンドンのトラファルガー広場では数百人が集まり、「魔女が死んだ」と喜びあってシャンパンを開け、サッチャーさんの肖像写真に赤い2本の角を描きこみ、「マギー、マギー、マギー」と叫べば、「死んだ、死んだ、死んだ」と声をそろえて叫び返すなど、「デス・パーティー」が繰り広げられた。

「死を祝う祭り」は、グラスゴー、リバプール、ブリストルなど国内のあちこちに広がった。

 海外では敬愛を集めることが多いサッチャーさんの死去を国内では「祝う」人たちがいるのは、いったいなぜか。それは彼女の政策にある。サッチャーさんは公共機関の民営化を推し進め、公営住宅を売却し、教育などにも競争原理を持ち込み、労働組合を屈服させ、いくつもの鉱山を閉鎖させた。その結果、インフレは鎮静化、国家財政の再建にもある程度の成功を収めた。しかし、「サッチャリズム」の陰で泣いた人も少なくなかったのだ。ケン・リビングストン元ロンドン市長は「イギリスのいま抱える問題すべてに彼女は責任がある」と明言する。

 サッチャーさんの死後、緊急に行われたアンケート調査によると、彼女はイギリスにとって「良かった」は50 %、「悪かった」は34%という結果だった。「良かった」と判断する人が半分を占めているものの、「悪かった」との答えも3分の1に達する。

AERA 2013年4月22日号