北朝鮮の3度目の核実験強行(2月12日)に対する抗議デモが中国各地で頻発している。だが正恩氏も黙っていない。エネルギーと食糧を頼る中国には露骨な挑発はできないものの、米国と韓国を標的に「映像攻撃」を仕掛けているのだ。

 火柱が一気に噴き上がり、米兵やオバマ大統領が炎に包まれる──。核実験から5日後の2月17日、ユーチューブに投稿された動画「米国のせいだ」には米オバマ政権への呪詛が満載だ。この手の罵詈雑言は北の十八番である。

『米国の約70年にわたる暴虐な対北敵視政策が、北朝鮮を地球上で最も強力な軍事強国に至らしめたと言っても間違いではない。

 弱肉強食を生存法則とする米国には口で言っても通じない。だから米帝に向けて行った高い水準の核実験は自主権を守る核抑止力となる。米国は北を核実験に導いた案内者であり、よって、こうなったのは米国のせいなのだ。

 もう一度言うが、北の3度目の核実験! これは徹頭徹尾、北の安全と自主権守護のための、敵視政策に対する対応措置であり、いまや時間はもはや米国の側にはないという厳粛な警告である。

 世界は見ている。米国は答えねばならない。』

 ミサイル搭載用の核弾頭が映しだされ、それが爆発、巨大な火の海が広がる場面も。

 2月2日には北朝鮮のスペースシャトルもどきの宇宙船「光明星(クァンミョンソン)21号」が宇宙を飛び回り、地球を眺める「ある若者の夢」の映像がユーチューブに投稿された。昨年12月の事実上の長距離弾道ミサイル発射を受けて作られた。北朝鮮による朝鮮半島統一、燃える米ニューヨーク市街の映像がクライマックスだ。

『一つになった祖国にはためく「統一の旗」…。米国に黒い煙が見えます。侵略戦争に狂う悪の巣窟が燃える姿。宇宙が(我々を)祝福してくれているようでした。』

 昨年7月には映画「ロッキー」テーマ曲の演奏やミッキーマウス、ミニスカートの女性歌手を登場させた新楽団のお披露目公演に妻を連れて出席。

 米国文化への憧れを滲ませつつ、やれ敵視政策をやめろだの、核武装は自主権を守るためだのと吠える正恩政権。言うことは立派だが、要は、金王朝維持と恐怖政治による支配体制をいまのまま続けたいのが本音だ。そのための核実験であり、ミサイル発射なのである。

AERA 2013年3月11日号