近年、結婚せずに実家暮らしをする「パラサイトシングル」が増えている。中には姉が未婚、妹が既婚、というケースもある。

 パラサイトシングル問題について15年前から警鐘を鳴らしている、中央大学文学部の山田昌弘教授は、このことについて次のように話す。

「今の20代は、より良い相手を積極的に見つけようと『婚活』に走っているが、そうした概念がなかった30代、40代は『いつか結婚できる』と、いまだに白馬の王子を待ち続けている人も多い。一方で、娘に『俺が100まで生きてお前の面倒見るから安心しろ』という父親もいます。このまま中年パラサイトが増えたら、親世代が亡くなる10年、20年後に破綻する家族がたくさん出てきます。そのときに生活保護制度が今のままだったら、支える人が圧倒的に少ない中で貧困高齢者が山のように出現し、国家財政も破綻します」

 こうなると、もう個々の姉妹間だけの問題ではないともいえるが、日本仲人協会によると、姉妹が同時期に結婚相談所に入る場合でも、妹があっさり先に決まるパターンが9割以上を占めるという。

「男性側は自分の年齢にかかわらず、一歳でも若い人を希望するケースがまだまだ多いからだと思います。ただ、男性側だけの問題でもありません」

 というのは同協会に加盟する仲人士の浜緑(はま みどり)さんだ。

 30代前半のある姉妹。2人とも美人で、有名大学を卒業後、大手企業に勤務。容姿、学歴、職業など、プロフィルはともに抜群だ。妹は結婚する気が全くなかったが、結婚願望の強い姉のために様子を見てみようと、ある結婚相談所に入会したところ、自身にお見合いの申し込みが殺到。半年後にスピード婚を遂げた。

 姉ももちろん入会したのだが、何やかんやと理由をつけては次々とお見合いを断り続け、しまいには、かなりの年下で難関国家試験合格を目指しているという元彼とヨリを戻したとかで、結局退会してしまった。といって結婚したわけではなく、彼の将来性を見込んでの「未婚」(という感じ)だ。

 そこには「理想を追う姉・現実的な妹」像が見え隠れする。

 浜さんいわく、

「お姉さんには、結婚生活そのものより、周囲の目を気にするあまり『結婚している人』になりたい、というだけの人も少なからずいるように思えます。妹へのライバル心もありますし」

 順番を越されたら、高スペック夫をゲットして「一発逆転(!)」を狙う。「妥協の産物」のような結婚は姉のプライドが許さないのかもしれない。

AERA 2012年12月3日号