もと吉本名古屋からデビューし、のちに上京してコンビ「メカドック」を結成。08年にコンビを解散しピン芸人となった。サンミュージック所属(撮影/写真部・久保木園子)
もと吉本名古屋からデビューし、のちに上京してコンビ「メカドック」を結成。08年にコンビを解散しピン芸人となった。サンミュージック所属(撮影/写真部・久保木園子)

 ここのところ、芸歴の長い芸人の活躍が目立っている。

「ワイルドだろぉ~」のギャグが流行語大賞にもノミネートされるなど社会現象化しつつあるスギちゃんも、芸歴19年目。ワイルドキャラが生まれたのは昨年11月ごろだが、そこから2カ月で年始のお笑い特番で大賞をとり、さらに「R–1」で準優勝。一気にブレークした。

「自分も含めて、芸歴の長い遅咲き芸人のほうが、そういった大会にかける思いが大きいと思うんです。ネタ以外の裏ストーリーも生まれてくる」

 デビュー以来コンビで活動していたが、3年近く芸人として無収入だったこともあった。

「コンビでは自分のやりたいボケができなくて、もっと突っ走ったボケがしたかったんです」

 と、4年前にピン芸人になってからは巨乳女性やアイドルなど様々なキャラを試してきた。そして昨年、「スギちゃん」キャラが降りてきた。

 仕事のない時代もなぜか「いつか売れる」という確信だけはあった。母親には常に「絶対に売れるから」と告げていたという。その母親が近所の住人にスギちゃんのR–1決勝進出を告げたところ、「まだあの子、芸人続けてたの?」と返された。

「それを決勝前日に聞かされて、燃えましたね。絶対に結果を出してやろうじゃねえかと」

 力がありながら人柄を感じさせるような人間味がある芸人が残る時代。そう、スギちゃんは分析する。

AERA 2012年12月3日号