いわい・しまこ/1964年、岡山県生まれ。99年、『ぼっけえ、きょうてえ』で日本ホラー小説大賞。翌年、山本周五郎賞。2008年、18歳年下の韓国人男性と再婚 (c)朝日新聞社
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いわい・しまこ/1964年、岡山県生まれ。99年、『ぼっけえ、きょうてえ』で日本ホラー小説大賞。翌年、山本周五郎賞。2008年、18歳年下の韓国人男性と再婚 (c)朝日新聞社
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 作家の岩井志麻子さんに聞いた。

* * *
 女ってとにかく、3歳の幼稚園児から103歳のおばあちゃんまで「チヤホヤ」されたい生き物。チヤホヤとは、男性から「かわいいね。綺麗だね。僕はあなたを求めてる」って言われること。

 なぜ演技するのか。「いい女」に見て欲しいからですよ。

「感じやすく色っぽい、セックスが開発されたいい女」

 そう思って欲しい。

 女は演技できるし、男はすぐ騙されます。女が「いった~」って言ったら、男はOKなんです。

 女の演技は、相手への思いやり。もっと演技しましょう。そうすれば、本当の気持ち良さが、付いてきます。

 最近、心に残った話があってね。仲良しの女性がインタビューした脱北者の中に、平壌の高級官僚の妻がいた。夫が失脚して二人で中国に逃げたけど、生活できず売春宿で働いていた。そこに韓国の男が客として来たの。その韓国男のセックスがよくてよくて、よくてよくて。

 結局、彼女はその男が忘れられず、夫を捨てて韓国に行っちゃう。素性もわからず、探しようもないのに。

 この話を、友達の西原理恵子にしたら、理恵子は唸るようなことを言った。

「たぶん男は、彼女にかわいいねって言ったんだよ」

 私、わかるなあ~と思った。脱北者の彼女は、今までそんなこと言われたことがなかったんだと思う。夫とは機械的なセックスしかせず、売春宿では人として扱われず。だから初めて「かわいいね」と言われ、嬉しくて、よくてよくて、になっちゃった。

 結局、女が欲しいのは「かわいいね」の言葉。それだけじゃないのかな。これは日本のOLも同じです。

AERA 2012年10月01日号