衣類のしわを伸ばせば自分の心にも「アイロン」がかかる 〈AERA〉|AERA dot. (アエラドット)

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衣類のしわを伸ばせば自分の心にも「アイロン」がかかる

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 不況で雇用は不安定だし、年金などの将来不安も大きい。いまの日本に、迷いなく幸せだと言いきれる人が、どれほどいるだろうか。「自分を幸福にするささやかな装置」の存在が、毎日を前向きにしてくれているのだ。「あなたの幸福維持装置は何すか?」。そう、いろんな人に問いかけた。

 幸福維持装置の基本的な構成要素は二つ。一つは、他人目線を排除した自分のための時間を過ごすこと。もう一つは、自分なりの達成感を得られること。それを「アイロン」で実践しているのは、慶應義塾大学で国際金融を教える経済学博士の宿輪(しゅくわ)純一さん(49)。日曜日の午後4時ごろ。宿輪さんはフェイスブックで呼びかける。

「アイロンタイム1時間前です。ご準備宜しくお願いします!」

 宿輪さんは、フェイスブック上に「日本アイロン倶楽部」という400人を超えるグループを作っている。毎週日曜日午後5~6時がアイロンタイムで、宿輪さんの呼びかけには続々と反応が返ってくる。

「今日のミッションは、パンツ5本、ハンカチ7枚です」
「いつもクリーニングに出すズボンを自分で洗濯しアイロンがけしたのは進歩です。出掛ける前にアイロンが終わっているのは気分がいいですね!」

 写真もアップして楽しそうに報告し合う。宿輪さんは言う。

「衣類のしわを伸ばすことは、実は自分の心にアイロンをかける行為。気持ちもピシッとするし、毎週繰り返すことで上達する。ラジオ体操の判子を一個ずつ押すような達成感もある。日常の単純な所作の中にこそ、幸せが宿る」

 参加者のほとんどは、宿輪さんが経済などをテーマに開く、公開講義「宿輪ゼミ」のメンバーだ。金融関係者だけではなく一般会社員、主婦、大学生、官僚などが自主的に参加するゼミで、学ぶこと自体を楽しみ、6年続いている。

「経済が低成長になった日本で、会社での出世やポスト、給与などに幸せを求めるのは難しい。自分は『自分』という肉体の社長であって、その自分をいかに満足させるか。質的な幸せを求める思考に変わるしかないと気づいた人が多いのでしょう」

AERA 2012年9月24日号


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