日本に甚大な被害を与えた東日本大震災と、それに伴って起こった伴って起こった東京電力福島第一原発事故。この時の気象庁や日本気象学会の対応についても、アンケートで意見を求めた。

 東京電力福島第一原発事故を受け、日本気象学会の新野宏理事長(東京大学教授)は2011年3月18日付で、会員に通知を出している。

「学会の関係者が不確実性を伴う情報を提供することは、いたずらに国の防災対策に関する情報を混乱させる」
「防災対策の基本は、信頼できる単一の情報に基づいて行動すること」

 この通知に対して、一部学者やマスコミから「学問の自由や重要な防災情報の発信を妨げる恐れがある」などの批判が出た。

 アンケートでは、気象学会の体質を指摘する声もあった。

 東京理科大学の渡辺正氏は、こう回答した。

「気象学会を『政治におもねる体質』とみるのは、諸手を挙げて賛成。真に国民のことを考えている関係者が少ない。『温暖化の恐怖』を煽る気象庁の姿勢も同類だ。お金や地位がからむと途端に話がおかしくなる」

 だが、渡辺氏のような見方は少数だ。他の回答者からは、通知への批判はほとんど見られない。新野理事長は、「政治におもねる意図は全くなかった」と回答した。

 また、気象庁は東日本大震災直後から1日1、2回、国際原子力機関(IAEA)に、放射性物質の拡散を予測した資料を提供していた。だが当初、これを国民には公表しなかった。

 当時、枝野幸男官房長官は記者会見で、気象庁の拡散予測を公表しなかった理由について、国内の対策の参考にはならないからだとしたが、「公表すべきだった」とも述べ、気象庁も公表へと転じている。

 アンケート結果では、気象庁が拡散予測を公表しなかったことを支持する声が相次いだ。迅速だがリスクを含む情報を公開するより、完璧さを優先させるべきとの考えが主な理由だ。「法の不備」を指摘して擁護する声もあった。

AERA 2012年9月24日号