国会議事堂などの国家の中枢機能が密集する間近で、新しい断層が見つかった。南海トラフ地震も想定される中、どのような防災計画を立てるのかが課題だ。

 東京の中心部に、長さ約7キロメートルにも及ぶ断層が存在することが分かった。8月20日に埼玉県で開かれた日本第四世紀学会で、豊蔵勇・元日本活断層学会副会長らのグループが発表した。

 断層が発見されたのは、北区田端付近から新宿区四谷にかけて。首都機能のまさに中心と言える地帯だ。断層は、この地帯を分断するように南北に走っている。

 東京大学や東京ドームなどが断層に近接している。国会議事堂、霞が関の官庁街、皇居なども断層から3キロ程度しか離れていない。JR中央線や地下鉄東西線など複数の路線が、この断層の上を通過している。また、周辺には他の断層が存在することも、これまでに明らかになっている。

 豊蔵氏は言う。

「断層のずれが繰り返し起こっており、『活断層』に近いものだと考えられます」

 では、この断層を震源とする地震が起これば、どういった被害がもたらされるのだろうか。

 豊倉氏によると、地震のタイプとしては、東京湾北部地震に近いという。

 東京湾北部地震とは、今年3月に想定震度の最大が「6強」から「7」となったことで話題になった首都直下地震を指す。マグニチュード(M)7.3、東西63キロ、南北31キロの震源域を想定している地震で、東京都が4月に発表した被害想定では、都内の死者は9700人。うち火災による犠牲者は4100人に上る。

 都市部の地震で恐いのは、やはり火災だ。『直下型地震 どう備えるか』との著書がある島村英紀・武蔵野学院大学特任教授(地震学)は言う。

「都市部は密集しており、地震が起こると火災が起き、『火災旋風』が起こる可能性が高いのです」

 火災旋風とは、炎の竜巻のことで、炎を高く巻き上げ、幅広い範囲を一瞬にして延焼させる。1923年に起きた関東大震災では、東京都墨田区内の陸軍被服廠跡で、避難してきた人たちが火災旋風に巻き込まれた。この被服廠跡だけで約4万人が死亡するなど、10万人以上が火災旋風で死亡したとされている。

AERA 2012年9月24日号