日本でテレビの本放送が始まって今年で65年。この間、時代を象徴する数々の人気者が生まれてきた。

 そうしたなかに「タレント」と呼ばれるひとたちがいる。歌手や俳優、お笑い芸人とも違い、所属するジャンルははっきりしない。とにかくテレビなどメディアに登場して活躍するひとたちのことだ。

 テレビの草創期から、タレントは存在した。1960年代には永六輔、大橋巨泉など放送作家出身のタレントが多数登場し、司会、作詞、歌手、俳優などマルチな活躍を見せた。70年代の堺正章は、グループサウンズの歌手としてスタートした後、ソロに転身してやはりマルチな分野で人気を博した。80年代以降になると、タモリ、ビートたけし、明石家さんまなどお笑いから他の分野へと活躍の場を広げるお笑いタレントの時代になる。

 そして現在、タレントのトップにいるひとりがマツコ・デラックスであることに異論を挟むひとは少ないだろう。各局にレギュラー番組を持ち、巧みなトークで場を盛り上げるかと思えば、専門家も顔負けの博識ぶりで人々を驚かせる。昨年は、NHKスペシャルのMCも務めた。CM出演も数多く、その姿をテレビで見ない日はないと言ってもいいほどだ。またコメンテーターとして、その発言はすぐさまニュースとなってしばしば世間をにぎわせる。

 だが、実際に私たちはマツコ・デラックスという存在をどれほど知っているだろうか?

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