3月号作家 清水義範 Shimizu Yoshinoriユーモラスな会話で相手の心を掴む |AERA dot. (アエラドット)

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3月号
作家 清水義範 Shimizu Yoshinori
ユーモラスな会話で相手の心を掴む

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 これまでに、文章の上達法を説く本は何冊も出してきている私だが、会話術の本は書いたことがなかった。

 と言うと皆さんの中には、会話術は簡単だからだな、と思う人がいるかもしれない。文章を書くには技術がいるが、会話ならば、声さえ出せれば気楽に雑談できるもので、上手、下手の差なんてあまりなくて、上達法など必要ないのだろうと。

 だがそれは違う。むしろ、文章術よりも会話術のほうが、どうすればうまくできるかを考えていくことが大変なのである。

 会話と一口に言っても、誰としゃべっているか、どういう状況でしゃべっているかなどで、そのあり方は千差万別なのである。

 たとえば、知人と他愛ないことで雑談しているのも会話だが、人前に立ってスピーチするのも会話だ。会社で上司に報告するのも会話だし、同僚に業務連絡をするのも会話である。恋人をくどくのも会話だし、妻や夫の愚痴につきあうのも会話だ。

 そういう状況ごとに、うまく話せるための技術があるのである。会話術を考えるのは、デリケートなことなのだ。

 だが、実際にコミュニケーション下手で自分の思いを相手に伝えられずに、人間関係のストレスに悩む人もいるのである。そういう人が、自分の思いを滞りなく相手に伝え、円滑な言葉のキャッチボールを楽しめるようになるには、会話術を上達させなければならない。

 たとえば、何気なく打っているあいづちの言葉でも、「はい」がいいか、「ええ」がいいか、「うん」がいいかは、二人の間のあらたまり度によって違ってくる。相手の話に合わせてあいづちを打つのも、うまいあいづちだと相手は気分がよくなり、いい調子でしゃべることになり話がはずむ。そんなことも会話の技術である。

 また、雑談の場であっても、出してはいけないタブーの話題がある。その話題だとみんなの話が噛み合わず、ギスギスした雰囲気になってしまうということもあるのだ。そんなタブーについても考えてみた。

 たとえば、ともすれば男性がやりがちなのが、自分の知識を誇るように、知っていることを並べたて教えるように話すことだ。要するにうんちくをたれるわけである。

 しかし、うんちくは特に女性に嫌がられることが多い。そんな話ばかり聞かされてうんざりしているのだ。うんちくはタブーだということを男性にアドバイスした。

 会話の中にユーモアがあると、聞いていても顔がほころび話もはずむものだが、そのユーモアが場違いだとその場の雰囲気がぎこちないものになる。ユーモア会話術もなかなか大変なのだが、そんなことも丁寧に考えてみた。

 時には、自分をだしにして失敗談をすることで、相手の心をゆるませることもできる。それもうまい会話である。

 また、微妙なことでは、拾ってはいけない相手の話を、うまくやりすごすことも必要になってくる。どんな話にでも乗って、話をエスカレートさせていくとあと味の悪い話になってしまうことがあるのだ。

 それから、チクリと嫌味を言われたような時に、どう切り返すかも高度な話術のひとつである。軽くさわやかに切り返せればかなりの会話力なのだが。

 そんなことまでを、話の流れの実例をたくさん出して説いたのがこの本だ。ビジネストークのしかたにも触れていて、うまい会議の進め方まで考えてみた。また、仕事の上で人に何かを依頼しなきゃいけない時に、どう話せば依頼を受けてもらえるのか、という考察もしてみた。

 身近な例で言えば、夫婦の間にどういう会話があるかも重要なことだ。夫婦という近すぎる関係に甘えて、あらためて会話をするなんてこともないなあ、ということだと、妻がストレスをためて体調を崩すという実例もあるのだ。夫婦でうまく会話できることは大切なことなのである。

「雑談力」とか、「質問力」という言葉を本書の中では使っている。そういう力を磨いて会話を豊かなものにしていけば、人間関係もよくなり、人と心を通わせることができるようになる。

 そして、スピーチや、講演を頼まれても、うまくできるようになる。そのための、話の構成の考え方や、声のトーンのあり方まで細かく説いている。スピーチは最初の一分で聞き手の心を掴め、というような技も役に立つであろう。

 あらゆる状況のもとで、相手の心を掴むようにうまく会話し、人間関係をよくする技術を、この一冊の中にすべて盛り込んでいるつもりである。大いに会話を楽しんでください。


(更新 2017/3/15 )


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