また、ドルフィン・ソングに関わる登場人物たちも、フリッパーズ・ギターに関係した実在の人物たちを思わせ、さらにはドルフィン・ソングの二人が好きだという楽曲やアーティストも、当時小山田さんや小沢さんが愛聴していたものであるといった徹底ぶり。



「ドルフィン・ソングはファッション・リーダーだった。アルバムごとに音楽性がガラッと変わるのと同時に、服装もベレー帽とボーダーのシャツから、ゴルフ帽とペインターパンツに切り替わった。(中略)ふたりの音楽はオレンジ・ジュースやアズテック・カメラ、パステルズやモノクローム・セットとったイギリスのネオアコやギターポップに影響を受けていた、というよりパクりまくっていた。歌詞はアーヴィングやレイモンド・カーヴァー、サリンジャーにデレク・ハートフィールドといった現代アメリカ文学からの膨大な引用で成立していた」(本書より)



 過去の自分自身やかつての交際相手と遭遇するなかで生まれる、なつかしい気持ちと思い出す痛み。果たしてトリコは、歴史を変え、島本田と三沢の死を防ぐことができるのでしょうか。



 樋口毅宏さんによる『ドルフィン・ソングを救え!』。表紙には、フリッパーズ・ギターに関係の深い、岡崎京子さんによるイラストが描かれています。