ショートケーキ、ロールケーキ、モンブラン、マカロン、プリン、ドーナツ、ぼたもち、おはぎ、月、どら焼き、羊羹、金平糖......洋菓子に和菓子にと、私たちを虜にする多種多様なスイーツの数々。



 普段、当たり前のように食しているこうしたスイーツですが、その誕生の歴史や、名前の由来、秘められたエピソードをご存知でしょうか。



 本書『スイーツ手帖〜おいしさをひもとく142の秘密〜』の監修をしている、日本スイーツ協会・代表理事の辻口博啓さんは、スイーツはひとつの文化であり、そこには奥深い世界が広がっているのだといいます。



「スイーツのひとつひとつに誕生の歴史があり、魅力的なエピソードが数多くあります。各地に古くから伝わる伝統菓子や郷土菓子も、歴史をひもとけば他国の影響を受けていたり、地方ごとにレシピや形が違っていたりと、さまざまな発見があります」(本書より)



 本書では、さまざまなスイーツ、その由来の解説にはじまり、季節や行事にちなんだスイーツの紹介、材料や作り方に関する豆知識にいたるまで、スイーツの持つ奥深い世界を堪能できる一冊となっています。



 スイーツの誕生の歴史----たとえば、日本でも1990年代にイタリア料理の流行とともに一代ブームを巻き起こした、イタリア生まれのケーキ「ティラミス」。



 今ではコンビニやスーパーでも売られており、身近なスイーツのひとつですが、「Tirami su !」とはイタリア語で「私を引っ張りあげて」「私を元気にして」という意味を持つのだそう。



 マスカルポーネチーズのクリームとエスプレッソコーヒーを浸み込ませたスポンジ生地からなるティラミスは、18世紀ヴェネチアにおいて、遊びに出かけるときのデザートだったという説や、エスプレッソにはカフェインが含まれているため、夜遊びに行く前に食べられていたというエピソードもあるスイーツ。またレシピによってはお酒を使うものもあり、大人のスイーツなのだといいます。



 続いて、こちらもまた馴染みのあるスイーツのひとつ、「エクレア」。



 エクレアは、フランスでは昔から多くの人びとに愛されているスイーツですが、正式には「Eclaire エクレール」といい、雷、稲妻という意味を持ちます。



 バリエーション豊かな可愛い見かけには一見似つかわしくない、この名前の由来には、中のクリームが生地からはみださないように稲妻のごとく、電光石火ですばやく食べなければならないという説や、生地を焼いたときの表面の亀裂を稲妻に見立てたといった説があるのだそうです。



 味わって楽しむことはもちろんですが、その由来やエピソードを知れば、スイーツが繰り広げる世界をより一層楽しむことができるはずです。