とはいえ、坂上さんは「理解されなくてもいい」と開き直っているわけではなく、時間をかけて本当の顔が見えてくればそれでいいと考えているのです。その点について、彼は自身の読書観になぞらえ、こう説明しています。

「一冊読んで、『あ、この作家はこういう思考の人種なんだ』と、決めつけに近い感情を持ったとしても、必ず次の作品も読むようにしています。で、次もまずまず面白ければ、その次も読む。そうしていくうちに『こういう人種』だと思っていたものが、徐々に変化を遂げていき、新たな輪郭が書き加えられていったり、一部が消しゴムで消されたり......と、しつこいほどの修正が繰り返されるなかで、ようやく本物の顔が見えてくる。僕はそれでいいと思っているだけのこと」(『偽悪のすすめ』より)



 時間をかけて人のことを判断してきた坂上さんだからこそ、人からの判断を急いでいないのかもしれません。ですので、先入観を持って自分のことを見てもらってもいいと言い切れるのです。



 不思議と炎上が少ないのは、そんな坂上さんの生き様に共感する人がいるからではないでしょうか。自著で「偽悪」をすすめる坂上忍さん......、実はいい人?