沢田研二
沢田研二

 このごろ、昭和や平成のヒットソングを紹介するテレビ番組をやたら目にする、と感じたことはないだろうか。ご明察。ヒットの元はTikTokというショート動画を投稿するSNSだ。

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 TikTokの動画のなかで、若者たちが昭和や平成のヒットソングを歌ったり、BGMにして踊ったり。そこから火が付いて、リバイバルヒットする曲も増えている。

 例えば、1970年代の「花の中3トリオ」(山口百恵、桜田淳子、森昌子)といった昭和アイドルの曲から、ディスコミュージックなどバブル期の洋楽、さらにはPUFFYの「愛のしるし」などJ−POP黎明期の曲まで、昭和、平成のヒット曲が、令和のTikTokで普通に流れてくるようになった。

 ちなみに自分はコロナ禍のどさくさのうちに還暦を迎えてしまったが、若いときは何世代も前の人たちが好む特に国産のヒット曲なんて、古くさくて、とてもとても。当時もしSNSがあったとしても、演歌や軍歌で踊ろうなんて発想は、1ミリもなかったと思う。

 なのになぜ、昭和、平成のヒットソングがTikTokではやるのか。

「昭和や平成のヒット曲には、サブスクでターゲットが分化した現在の音楽ではなく、テレビやラジオなどのマスメディアから流れ出る、大げさにいえば1億人を相手にした“間口の広い音楽”が多いからではないでしょうか」

 そう分析するのは、『80年代音楽解体新書』(彩流社)などの著書がある音楽評論家のスージー鈴木さんだ。

「とくにそれらの音楽には、1億人の胸をグッとつかむような、強烈なサビがある。その部分を切り取ってTikTokの映像のバックで使ったら、強い拡散を果たしてくれるから、だと思います」

 なおTikTokで昭和、平成のヒットソングが流れるようになったことについては、こんな感想を持っている。

「ラッツ&スター『め組のひと』のようなキャッチーなサビは、時代が変わっても、支持され続けるんだなぁ、という驚きはありました。とはいえ、サビを部分的に受け入れるのではなくて、できれば曲全編をしっかりと味わってもらえたら、いいと思います」

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