Photo:Mickael
Photo:Mickael Lefevre

 世界に衝撃を与えた大火災から4年──。世界遺産、仏・ノートルダム大聖堂は2024年の再建を目指して修復中だ。火災当時の詳しい様子を映画化した「ノートルダム 炎の大聖堂」が公開される。CGをほぼ使わず、当時をリアルに再現したジャン=ジャック・アノー監督に話を聞いた。

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──2019年4月15日、世界遺産・ノートルダム大聖堂で火災が発生。ニュースは瞬く間に世界を駆け巡った。

 私が最初にそのニュースを聞いたのは、パリではなく海辺の小さな家でした。ラジオで聞いていました。大聖堂は子供の頃からよく知っているので、まるでハリウッドのドラマを見ているかのような気持ちになりました。なぜなら消火隊はアクセスしようがなく、現場への到着がすごく遅かった。その間も、パリでもっとも美しい場所で火災が起きている。ものすごい緊張感がありました。私は妻に言いました。「あらゆるバカな映画作家たちが、この火災について映画を作りたがるよ」と。そのバカな映画作家とは私のことだったのですが(笑)。

──なぜ映画化しようと思ったのですか。

 実際に大聖堂の中で起こっていたことは外から見えないので、後で資料を読みましたが、信じられなかったんです。有能なジャーナリストが作り上げた話だろうと思いました。ところが、実際に300人以上にインタビューをしましたが、本当のことでした。取材を重ねるにつれ、私が読んだこと以上にもっとひどいことが起こっていたことがわかりました。もっとエキサイティングでもっと興味深いことが見えないところで起こっていたのです。私はそこに非常に魅了されました。

 ただ、世界有数の誰もが知っている建築が燃えているということで、きっと(映画製作の)激しすぎる競争になるに違いないと思いました。実際ドキュメンタリーはたくさん作られましたが、私のようなやり方、事実でありながら再構築された「事実に基づく非常にエキサイティングなストーリー」という形をとる人はいませんでした。

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