西洋医学だけでなく、さまざまな療法でがんに立ち向かい、人間をまるごととらえるホリスティック医学を提唱する帯津良一(おびつ・りょういち)さん。老化に身を任せながら、よりよく老いる「ナイス・エイジング」を説く。今回のテーマは「87歳になって思う」。

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【日銭】ポイント

(1)佐藤一斎の没年齢に追いついて、やはりうれしい

(2)老人だと自覚してから、もう17年もたってしまった

(3)最近は死後の世界への親しみが一段と増してきた

 2月17日に87歳になりました。去年ここに書いた「86歳の誕生日」という原稿(2022年3月18日号)で、江戸時代の4大養生家の没年齢を紹介しました。単純に没年から生年を引いて計算したのですが、白隠慧鶴(1686~1769)=83歳、貝原益軒(1630~1714)=84歳、神沢杜口(1710~1795)=85歳、佐藤一斎(1772~1859)=87歳です。

 去年はこのうち3人の没年齢を超えたと自慢したのですが、今年は佐藤一斎にも追いつきました。やはり、うれしいですね。とはいっても、江戸時代にこれだけ長寿だったことを思うと、かないませんが。

 誕生日のお祝いというのはあまりやったことがなかったのですが、70歳になったときに病院のスタッフから「お祝いをしましょう」と言われました。実は「えっ」という感じだったのですが、「古稀ですから」と説明されて、「ああ、そうか」と納得しました。

 古稀とは中国の唐時代の詩人、杜甫の詩「人生七十古来稀なり」に由来していると言われています。つまり、そこまで生きれば、大したものだということなのです。「そうか、俺もいよいよ老人なのだ」と、このときに初めて自覚しました。急に老人であることが気になり、古代ローマの哲学者・政治家キケローの著作である『老年について』(岩波文庫)を買って読んだりしました。それからもう17年もたってしまいました。長く老人を続けてこられたものです。

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帯津良一

帯津良一

帯津良一(おびつ・りょういち)/1936年生まれ。東京大学医学部卒。帯津三敬病院名誉院長。人間をまるごととらえるホリスティック医学を提唱。「貝原益軒 養生訓 最後まで生きる極意」(朝日新聞出版)など著書多数。本誌連載をまとめた「ボケないヒント」(祥伝社黄金文庫)が発売中

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