イラスト/もりいくすお
イラスト/もりいくすお

 すぐさまAに「ハンセンの金髪がうちにあるから見に来いよ!」と電話。「いや、ハンセンはそんなに金髪じゃないだろ」とA。「じゃあ誰のだ!?」「可能性があるなら、(ジョニー・)エースじゃないか? 金髪で長髪はエースだけだし」「エースには触れてないぞ!」「ハンセンと控室は同じなんじゃないか? 何らかのカタチでハンセンに付着したエースの金髪が、ハンセンを介してお前に付いたとしか……」「でもハンセンにはロープで引っ叩かれただけだ!」「それだ! ブルロープの編み込みにエースの髪が挟まっていて、それがお前に!!」「そんなバカな!」「でもそうとしか考えられんだろ!」「うーん……そうだなっ!!」。Aも二日酔いだったようだ。

 そのまま私はその一本の金髪をうやうやしく頂き、フィルムケースに入れて保存した。

 そんなものも当然もうどこかへいってしまったが、二日酔いの頭でモノを考えることの無駄と豊かさを思い出す、令和5年の二日酔いの朝。あぁ、頭が痛い。

春風亭一之輔(しゅんぷうてい・いちのすけ)/1978年、千葉県生まれ。落語家。2001年、日本大学芸術学部卒業後、春風亭一朝に入門。この連載をまとめたエッセー集の第1弾『いちのすけのまくら』(朝日文庫、850円)が絶賛発売中。ぜひ!

週刊朝日  2023年3月24日号

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春風亭一之輔

春風亭一之輔

春風亭一之輔(しゅんぷうてい・いちのすけ)/落語家。1978年、千葉県生まれ。得意ネタは初天神、粗忽の釘、笠碁、欠伸指南など。趣味は程をわきまえた飲酒、映画・芝居鑑賞、徒歩による散策、喫茶店めぐり、洗濯。この連載をまとめたエッセー集『いちのすけのまくら』『まくらが来りて笛を吹く』『まくらの森の満開の下』(朝日新聞出版)が絶賛発売中。ぜひ!

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