歴史の舞台となった城に興味を持ったら、現地に行ってみるのがおすすめだ。大河ドラマどうする家康」で時代考証を担当している歴史家の平山優さんと、当代きってのお城の研究家である千田嘉博さん。旧知の二人がお城歩きの魅力と楽しみ方を語り合った。

【復元した駿府城東御門や、駿府城で発掘された家康の天正期大天守台石垣の写真はこちら】

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──家康が本拠地と定めた浜松城は、東海道、本坂道(姫街道)、鳳来寺道(金指街道)と、複数の秋葉街道(二俣街道、笠井街道)という陸上交通路の結節点であり、商品流通や人馬の往来が盛んなところであった。これが、浜松城の強みであったことは言うまでもない。その他に見落とせないことがある。それは、浜松城の西側に広がる浜名湖、佐鳴湖の水上交通である。(平山優著『新説 家康と三方原合戦』から)

平山:私は地域社会や戦場などの「面」の中で城を考える視点が強いんです。戦国大名がどのように勢力を伸ばしていくかを、文献側から追い、その史料として古道や河川の跡をできるだけ調べています。城が度重なる戦場の舞台であれば、何度かつくり変えられているはずです。縄張り図や古道の位置を頭に入れて現地に行くと、ここは守備に重きを置いているとか、どう攻めればよいかがわかります。

千田:城の楽しさって「本物」を自分で体感できることだと思います。城跡は400年とか450年前の実物が現地に残っていて、堀の跡はまだ窪(くぼ)んでいます。土塁の跡も高まっています。深い空堀にハマるなど、歴史を体で感じて身体の感覚を資料に、信玄はこう考えていたんじゃないかとか、家康はこんなふうにしようとしていたんじゃないかと考えられるのが、城歩きの魅力じゃないかと思います。

平山:どうやって守っていたんだろう、どうやって攻めたんだろうと考えながら歩けるっておもしろいよね。

千田:「今、狙われている!」とか、「こちら側から撃たれている」とか、歴史を感じることができる。

平山:実際に歩いてみると、城の裾を回って道があるとか、初めて気付くこともありますしね。

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