セブン&アイ・ホールディングス(HD)が子会社の「そごう・西武」を米投資ファンドのフォートレス・インベストメント・グループに売却する。注目はフォートレスと連携する家電量販ヨドバシホールディングスの動向だ。西武池袋本店などへの出店が取りざたされるが、元西武百貨店社長の水野誠一さん(76)は「三つのハードルがある」と指摘する。
【貴重写真】路面電車が!1963年、銀座三越屋上から撮影。百貨店がにぎわっていた古き良き昭和の時代だ。
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──かつて売り上げ日本一を誇ったそごうと、消費文化をリードしたセゾングループの中核を担った西武百貨店は、ともに経営危機に陥り、統合して持ち株会社制に移行した。その持ち株会社(現そごう・西武)は2006年にセブン&アイHDの完全子会社となったが、低価格専門店やネット通販の台頭で閉店は止まらなかった。
21年度までの10年間で赤字は7度にのぼる。
私は西武百貨店にいた当時から「百貨店は中途半端な存在だ」と言っていました。マーケットが成熟し、合理性では量販店に、専門性では専門店に、利便性ではコンビニにかなわなくなっていた。これでは消費の高度化に対応できません。「百貨店には一通りの商品があるけど欲しいものがない。そんな業態になるぞ」って。
社長になる話があった時は社内に総投資額約3千億円の出店計画がありましたが、堤清二さん(元セゾングループ代表)に「全部やめたい。先を考えると店を減らして質の高さを目指すべきだと思う」と言って、すべての投資計画をやめたんです。
地域一番店以外の既存店は、ロフトのような専門大店に転換すべきだと考えていました。全国百貨店の総売り上げは当時約10兆円でしたが、「20~30年で半分になるだろう」と取材に答えたこともあります。実際、そうなりました。
前任社長時代の不祥事が発覚し、後処理を見届けた上で辞任しましたが、その後の西武は「普通の百貨店」に逆行してしまい、セブン&アイHDの傘下に入ってからも閉店が進みました。店の質的な変革はなく、売り場を取引先に任せ、ボリュームゾーンだった平場(既製服売り場のように一般的商品を集めた売り場)は利益を生まなくなっています。